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第22話

 兄から鈴村の話を聞いて、かれこれ一週間が経った。  その間、鈴村達に従順にふるまっていたおかげで新たな暴行は受けず、負っていた怪我はだいぶ治って激しく体を動かしても痛くなくなった。  奴らは大人しい俺をつまんないと時おり文句を言っていたが、知ったことではない。  そして今日は作戦の決行日でもある。  それに伴って、朝早く来た俺は誰もいない昇降口の中、自分のクラスの下駄箱の向かい側の下駄箱の前に立った。  一週間前、鈴村に空き教室に連れていかれるときに、鈴村の下駄箱の位置は見ていて憶えていたのだ。  俺は鈴村の下駄箱の中に、可愛らしいシールが貼られた手紙を鞄から取り出して入れた。  手紙の内容は『放課後、一階の空き教室にてお話があります。待っています。』と告白をよそおって書かれたものだ。  俺はどうか鈴村が来てくれますように、と手を組んで願掛けのポーズをし、その場を去った。 「おはよう奈留」 「…おはよう宮本」  朝のHR前、登校してきた宮本が挨拶をしにこちらまで寄って来た。  宮本にいじめがバレた日。あの日を境に宮本との距離はグンと縮まったと思う。何故なら、宮本が何かと心配をかけて俺に接してくるからだ。  宮本が俺に関わるとお前の仲間からのやっかみがあるからやめろ、と最初はそう言って彼を避けていたが、それでも構わず俺に接してくる宮本に俺は折れ、かかわってきても何も言わないでいた。  それを宮本は肯定と受け取ったのか、それから彼は俺に心配をかける頻度が増えた。  これ幸いなことに、宮本が俺にお節介をやいても彼の仲間は俺に妬むことなく、むしろクラスで浮いている俺を宮本が手を差し伸べているだけなのだと、勝手に彼らなりの解釈して、特に嫌味を言われることなく過ごすことが出来た。

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