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第23話

「昨日は大丈夫だったか?」  宮本が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。  最近は鈴村達に従順にふるまっているかいあってか、昨日、偶然奴らに出くわしても暴言を吐かれただけで済んだ。俺にとって暴言など慣れっこなので平気だ。 「大丈夫だよ。なんともなかった」 「本当の本当にか?」 「ああ、本当に大丈夫だった」  俺は本当に大丈夫なのだと示すように少しだけ笑った。 「…もしも何かあったら俺に相談しろよ」 「わかった。あ、それから」 「何?」  ふと、俺はあることを思い出した。 「一週間前、俺が空き教室で倒れていたのをなんで宮本は見つけることが出来たんだ? あそこの場所は学校の端にあって、普段なら通りかからないはずだけど」  宮本に助けられたあの日、気になって彼自身から直接聞こうと思っていたが、うやむやになって結局聞けずしまいだったことを宮本に尋ねた。 「ああ、それか。実は担任の教師から荷物運びの用事を頼まれていてさ、その用事が終わって空き教室近くの外を歩いていたら物音が聞こえて、何事かと思って様子を見に行ったら奈留が倒れているのが目に入ったんだよ。あの教師、人使いが荒いけど、奈留を見つけられたことには感謝しなくちゃね」  宮本はそう言ってニコリと笑った。  確かに、俺たちの担任の教師は人使いが荒い。特にクラス委員である宮本には何かと頼み込んでいる場面を何度か見たことがあるが、あの日もそうだったのかと納得した。  …宮本が俺を見つけたのは偶然ってわけか。  ほんの少しだけ、宮本が俺を見つけたのは何か裏があったのではないかと疑っていたが、思い違いのようでホッとする。 「それならいいんだ。宮本、あの日は助けてくれて本当にありがとう」 「俺は別にたいしたことをしたわけではないから、お礼は言わなくてもいいよ。…って似たようなセリフを一週間前にも言ってたな」  俺はそんな宮本の言葉にクスリと笑ってしまった。宮本も俺につられたのかクスクスと笑った。 「じゃあ、俺はこれで。再三、言うけど困ったことがあったら力になるからな」  それから宮本は後ろを向いて、手を上げてこちらに振りながら仲間の方へと戻っていった。

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