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第26話

 何分経ったろうか、ここの教室の時計は針が止まっていて時間が把握できない。  そしてまた、幾分か待った。  そろそろ机の間に身をしゃがめて潜めているのはつらくなってきたし、放課後になってから結構な時間が経ったと思う。  もしかして昼休みに言っていたことは嘘でここにはやってこないのだろうか。  そう思い始めていたが、  ガラッ!  突然、教室の扉が開く音が聞こえた。  …来たんだ。鈴村が…。  机の間から顔を出して除くと鈴村の横顔が目に入った。 「呼び出しておいて、まだ来てねーのかよ」  鈴村がかったるそうに手を首の後ろにまわした。  どうやらしばらく待つことに決めたらしい、教室の真ん中まで鈴村は歩き、そこで佇んでいる。  俺は再度、金槌を握り直した。緊張で手汗が滲みだし、持ち手が濡れてきた。  俺と鈴村の距離は数歩と近いが、バレずに殴るには鈴村が教卓の方、後ろを見たときがいいだろう。  その時までじっと待つ。俺は鈴村の動向をうかがった。  鈴村は窓の方を向いたっきりで中々体の向きを変えようとしない。  俺は焦った。このまま鈴村は教卓の方を向かないまま待っているのではないか。そしたら、無理を承知でも今、殴りに行ったほうがいいのではないか、と。  俺は迷いに迷い、その場でグズグズしていると、 「ほんと、おせーな。あの手紙、嘘かいたずらか?」  そう言うと同時に、鈴村が教卓の方を向いた。  好機。瞬時にそう思った俺は、バクバクと鼓動が高鳴りながらも、一歩また一歩と音を立てず静かに歩み寄る。

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