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第28話

※鈴村視点 「…んっ」  パチリ、と目が覚めた。 「ああ鈴村、目が覚めたんだね」 「…っあん、あ、あ、いっ…、やめっ、うあ…ん」  声が聞こえた方を向くと同時に頭から痛みが走った。  そうだ、あんとき…。  俺は下駄箱に入っていた手紙通りに放課後に空き教室に行って、それから何者かに殴られて気を失っていたんだと思いだした。  俺は殴られた箇所を触った。あれから随分と時間が経っていたのか、乾いた血の破片がパラパラと手についた。 「宮本、お前何でここにいんだよ」  ふと疑問に思ったこと投げかけた。  宮本とは二年次からの付き合いである。いや、付き合いというか付き合わされたという表現が正しい気がする。というのも、いつもなら朝晩と毎日欠かさず飲んでいる抑制剤をその日の朝は飲み忘れ、学校の廊下の物陰でこっそり口に含もうとしたところ宮本に見つかったのが付き合いの始まりだ。  俺がΩということを周りに知られたくない。だから、発情期に関わらず過剰に抑制剤を摂取し、それが原因でΩとしての機能が低下していっても摂取することをやめられず、その日の朝に摂取してないことが不安になって、学校内というのにも関わらず、摂取しようとした俺の落ち度である。  俺は宮本にこのことは内緒にしてくれと頼んだ。  宮本はそれをあっさりと受け入れてくれた、しかし代わりにある条件を差し出してきたのだ。 「うーん、今日の奈留の様子が変だったから、気になって後をつけてたんだ。途中でうざったいクラスの教師に用事を押し付けられ、奈留を見失っちゃってさ、探すのに手間がかかったんだよね」 「てなると、俺を殴ったのはあいつかよ」  何やら胡散臭い手紙だとは思っていた。だから、度胸試しとしてここへ来て、呼び出した相手をボコボコにしようと考えていたが、まさか後ろから殴られて気絶させられるとは思ってなかった。 「そういえば、あいつはどこ行ったんだよ」  俺はさらなる疑問を宮本に投げかけた。

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