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    第2話(1)

 ヴィンセントが向かったのは、おなじフロアーの通路の奥。書斎の隣にある主寝室だった。  キングサイズのベッドに下ろされて、莉音の心臓がふたたび早鐘を打ちはじめる。逃げ出したいほど怖くて、けれども、ヴィンセントが望みを聞き入れてくれたことが嬉しくて。  そんな莉音に覆いかぶさると、指先で顎を掬い上げるようにしてヴィンセントは深く口づけてきた。 「ふ……っん…んっ、ん……」  厚みのある舌を喉の奥まで差しこまれて口の中を掻きまわされる。先程までより遙かに情熱的で濃厚な口づけに、莉音はたちまち翻弄されて、とろかされていった。 「あ、はぁ……っ、んっ、んん……」  羽織っていたはずのパジャマの上はいつのまにか脱がされ、腰から腋のラインを何度も掌でなぞられて乳首を吸われる。莉音の躰は、途端に小さく跳ね上がった。 「あっ、や……っ」  腰の中心が甘く疼いて、下肢が痺れた。  自分で触れてもどうということはないそこが、ヴィンセントに触れられるだけで快感をもたらす場所となるのが不思議だった。  ついさっき吐精したばかりだというのに、莉音の性器はふたたび反応を見せはじめていて、そのことが恥ずかしくてたまらなかった。その恥ずかしさに追い打ちをかけるように、ヴィンセントは莉音の勃ちあがったものを口に含んだ。 「やぁあ……っ!」  自分でも驚くような甘ったるい声とともに、腰が跳ねる。もちろんそういう行為があることは知っていたが、まさか自分がされるとは思ってもおらず、莉音は激しく動揺した。しかも、それをしているのがヴィンセントなのだ。  いつでも紳士的で洗練された雰囲気を身に纏うヴィンセントは、莉音にとって憧れの存在であり、理想の大人の男性だった。顔の造形も、同性の自分から見ても完璧なまでに整っていて、どれだけ眺めても見飽きるということがない。その綺麗な唇が、自分のものを含んで刺激を与え、淫靡な音をたてているのかと思うといたたまれなさに消えてしまいたかった。  莉音は首を振りたくりながら足を突っ張り、ヴィンセントの口淫から逃れようとする。だが、腰がぐずぐずに砕けて、思うように力が入らなかった。 「やぁっ、だめっ、ダメッ……も、無理、だからぁ……っ」  泣き声をあげるも、ヴィンセントは口淫を解いてはくれない。裏筋を舐め上げられ、溢れる蜜ごと強く吸引されて小さな割れ目に舌先を差しこむようにしながら執拗にねぶられる。  与えられる悦楽が強すぎて、ほとんど拷問にさえ感じられた。最初は逃げるつもりで足掻いていたはずなのに、いつのまにか腰が揺れて、自分でもどうしたいのかわからなくなっていた。 「んぅーっ、やだっ、出、ちゃうっ……、また、イッ、ちゃ……っ」  切羽詰まった声で喘いでいた莉音は、枕の端を強く握りしめたまま背中を反り返らせた。  長い、長い愉悦による責め苦を耐え忍ぶ時間。  必死で堪えようとしたにもかかわらず、莉音はやがて、ヴィンセントの口の中で二度目の絶頂を迎えた。  ビクン、ビクンと躰を痙攣させた後、手足から力が抜けていく。ようやく莉音を解放したヴィンセントは、身を起こすと、みずからも着ているものを脱ぎ捨てた。手の甲で莉音の精を飲み下した口許をぐいっと拭う仕種が、いつになく野性味を帯びていて男らしい。  莉音は沮喪をしてしまったような気分で躰を丸めて横を向き、握りしめた枕に顔をうずめた。  恥ずかしくてヴィンセントの顔を見ることができない。だが、そんな莉音に後ろから近づくと、ヴィンセントはあろうことか莉音の腰を抱え寄せて、双丘を揉みこむようにしながら割り開いた。 「ひ…っ」  あられもない場所にあたたかい吐息がかかって莉音は身を縮める。次の瞬間、ベロリと舐められて悲鳴を放った。 「やっ! アルフ、さ……っ、アルフさんっ! やだっ! それダメッ。やあっ!!」 「莉音、ここを濡らしてほぐさないと繋がれない」  ヴィンセントはなだめるように言った。莉音の目に涙が滲む。 「でも、でもっ、そんなとこ、きたな…い。お願い、舐め、ないで……」  ヴィンセントは莉音のこめかみにキスを落とすと、その頭をそっと撫でた。 「そんなことはない。莉音、大丈夫だから」 「でもアルフさん、でもっ」 「すまない、莉音。でも、私も君が欲しい。次はちゃんとローションを用意するから、今夜だけ、私のために恥ずかしいのを我慢してくれるか?」  そんなふうに言われてしまったら、それ以上嫌だとは言えない。最初に抱いてほしいと懇願したのは自分のほうで、そんな自分に応えてくれているヴィンセントのほうが機嫌をとるように下手に出てくれている。  もう一度頬にキスすると、ヴィンセントは莉音の腰を抱えなおして、自分が普段、決して目にすることのない器官を丹念に舌先で舐めほぐしはじめた。

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