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第2話(2)
「ふっ、ん……っ、んくっ、ん……んん……っ」
莉音は枕をきつく抱きしめて、必死に声を殺しながら羞恥に耐える。
恥ずかしくて、どうしたらいいのかわからなくて、けれど、ヴィンセントから与えられる優しい刺激がとても心地よくて、溺れてしまいそうになる。
やわやわと襞を舐めていた舌先が、くすぐるように蠢 きながら内部に侵入してきて、莉音はふたたびビクンと躰をふるわせた。
「ひあっ、や……っ。あぁ…、ん、やぁっ!」
体内で生き物のように蠢く舌の感触に、莉音の背が大きく撓 る。
たっぷりと唾液を絡めたヴィンセントの舌先に翻弄されて、莉音の口から甘い嬌声が漏れ出た。
自分のそこを舐める淫猥な音が、耐えがたいほどの羞恥を煽る。
逃げ出したくて、けれども、自分を欲しいと言ってくれたヴィンセントの言葉が嬉しくて、莉音は啜り泣いた。
やがて、舌を抜いたヴィンセントは莉音の腰をさらに高く掲げさせ、濡れた後孔に中指をあてがうと、ゆっくりと沈めていった。強烈な異物感に莉音は歯を食いしばる。
「すまない、莉音。痛むか?」
訊かれて、莉音は枕をきつく抱えこんだまま必死で首を横に振った。言葉を発する余裕はすでになくなっていた。
室内に、荒い呼吸と押し殺すような喘ぎ声だけが響く。だが、丁寧にほぐされていく中で、不意にある一点に指先が触れた瞬間、腰が跳ねた。
「やっ、アルフ、さ……っ、そこ、ダ…メ……ッ」
必死で訴えるが、ヴィンセントは先程同様、少しも聞き入れてはくれない。莉音の躰を傷つけることがないよう細心の注意を払いつつ、指の数は着実に増やされていった。
「ふ、ん……、んんん……っ」
もう、なにがなんだかわけがわからず、ただひたすらヴィンセントのすることに翻弄されていく。耳に届く絶え間ない甘い声が、自分の口から発せられていることに莉音は気づかなかった。
どれほどの時間、そうして後孔をいじられていたことだろう。頭がぼんやりしてきたところで、ようやく指が抜かれた。
「莉音、大丈夫か?」
気遣うような、それでいて情慾を滲ませた、ひどく掠れた声が耳もとに吹きこまれて、莉音はそれだけで官能を刺激されて陶然となった。
ヴィンセントの手が、莉音の内股を撫でてわずかに足を開かせる。うつぶせのまま、下肢だけを持ち上げて突き出すような体勢で、先程まで指に犯されていたそこに、熱を帯びた、容積のあるものをあてがわれた。
「は、あっ……っ、あっ、あっ、あっ……っ」
指とは比べものにならない圧迫感を伴う挿入に、薄く開いた口から間断なく声が漏れ出た。
逞しいヴィンセントの雄茎が、未開の隘路 をゆっくりと、しかし容赦なく割り開いて奥へ奥へと侵入してくる。
「莉音、いい子だ。ゆっくり息を吐いて。そう、とても上手だ」
耳もとで響く艶のある声が、このうえなく甘い。
つらくて苦しいのに、ヴィンセントを受け入れられることがとても嬉しかった。
「ア、ルフさ……アルフ、さ、ん……」
莉音の声に応えるように、ヴィンセントの手が、指を絡めながら莉音の手の甲を包みこんでくる。
ヴィンセントが時間をかけて丁寧にほぐしてくれたからか、思ったほどの痛みはないが、それでもこれまでに経験したことのない苦痛に、切ない喘ぎが漏れた。
室内を満たす、荒い呼吸となんとも言えない淫靡な熱気。
根元まで無事、ヴィンセントを受け入れることができたときには息も絶え絶えになっていて、なにも考えることができなくなっていた。
そんな莉音を褒めるように、背後からまわされた手が頭を撫で、首筋に口づけを落とした。
躰の中で、ヴィンセントの昂ぶりがドクドクと脈打っている。愛おしむように莉音の躰を撫でさすりながら、ヴィンセントはゆるゆると腰を動かした。
「はぁっ…ん……」
莉音の口から、上擦ったような声が漏れる。ヴィンセントは反応を見ながらゆっくりと腰を揺すり、加減を加えつつ抜き挿しをはじめた。
「あっ、あっ……あぁっ、やっ、ん……っ。ひ…っ!」
躰が揺すられるたび、口から自然と声が零れ落ちる。
苦しくて、わけがわからなくて、だけれども、ヴィンセントと繋がれていることだけがただひたすらに嬉しくて。
自分はこんなにもヴィンセントのことが好きだったのだと、抱かれてはじめて強く実感した。
ヴィンセントの動きが次第に速まり、呼吸が乱れていく。強弱をつけて抽挿を繰り返しながら、動作の中に腰をまわす動きが加わると、莉音は細い悲鳴を放って背中を撓らせた。
甘い啼き声が室内に響きわたる。
ヴィンセントは一度己を引き抜くと、莉音の躰を返して両足を割りひろげ、正面からふたたび充血した後孔を穿って莉音を鳴かせた。
粘膜が擦れ合う淫猥な音に耳まで犯され、莉音は甘い喘ぎを口から漏らしつづけた。
苦しかったはずの結合は、いつしか快楽をもたらし、奥の一点を衝かれるたびにとろけるような痺れをもたらす。目尻からこめかみを伝って流れ落ちる涙を舐めとられ、閉じることができずに半開きの状態で喘ぎつづける唇を奪われ、きつく吸い上げられた。
猛々しい楔を包みこむ内壁が収縮して、大きなうねりが生じる。途端にヴィンセントの眉間に、深い皺が寄った。
間近から莉音を見つめる青い瞳が熱を帯びて爛々と輝き、はじめて見る、欲情した雄の顔を覗かせていた。
ぐぐっと腰を押しつけられて、莉音の口からあえかな声が漏れる。背中にまわした腕で力強く莉音の腰を引き寄せると、ヴィンセントはよりいっそう激しい抽挿を開始した。
求める相手にそれ以上に強く求められ、荒々しく征服されて欲望を注ぎこまれる行為がこんなにも幸せで嬉しい。
莉音はただひたすらに、甘やかな啼き声を漏らして与えられる快楽に溺れつづけた。
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