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 やがて唇を離したヴィンセントは、上気した莉音の頬を撫でて顔を覗きこんだ。だが、口づけの余韻にぼうっとなっている莉音は、とろけた眼差しでくったりと幅広の肩口に頭を預ける。その莉音の頬や首筋に、ヴィンセントは愛しくてたまらないとでもいうように、次々にキスの雨を降らせた。そして思わせぶりに、腰から背中にかけてスルリと撫で上げた。  官能を呼びさますようなその触れかたに、莉音はピクリと身をふるわせて息を詰める。 「莉音、悪いがまだ、おまえを休ませてやることはできない。まだ全然、おまえがたりない」  耳もとで囁かれて、背筋をゾクリと粟立たせた莉音はヴィンセントの首筋に縋りつく。 「アルフさん、お願い」  肩口に顔を伏せたまま、莉音は消え入りそうな声で囁いた。 「今日、僕の中に、出して。いっぱい、いっぱい――赤ちゃんが、できちゃうくらい……」  言って、恥じらうように、その耳が赤く染まる。莉音の髪を掻きまわすように頭を撫でたヴィンセントは、耳朶を軽く噛むと、艶のある声でそれに応えた。 「おまえが望むなら、孕むまで私の精をおまえの中に注ぎ入れよう」  その声だけで、ヴィンセントの雄蘂(ゆうずい)を包みこむ内壁が蠕動(ぜんどう)し、やわらかくうねる。 「はっ…ん……っ」  腰に手を添えて莉音を膝立ちにさせたヴィンセントは、長らくうずめていた秘所から己を引き抜くと、装着していたゴムをはずして躰の位置を入れ替えた。莉音をうながして四つに這わせ、その腰をあらためてとらえて己をあてがう。  赤く腫れた小さな穴が、ヴィンセントを待ち望むように妖しく蠢き、誘いこむように収縮を繰り返していた。その誘いに応えるようにヴィンセントは狙いを定める。そして、躊躇うことなく奥まで突き入れた。 「やっ、あぁあぁぁぁ――――――……っ!」  莉音の口から切ない悲鳴が迸る。太く硬い熱杭を受け止めた衝撃に、背中が大きく撓って全身がビクビクとふるえた。  ヴィンセントは、ふたたび腰を叩きつけるように力強い動きで律動を開始した。深く穿たれ、奥まで抉られて莉音はよがり泣く。けれどもやがて、みずからも悦楽を追求するように腰を振りはじめた。  まえにまわされた手でヴィンセントに性器を扱き上げられ、莉音はかぶりを振りながらも甘い声を漏らす。抽挿が次第に速まり、奥の一点を集中的に突き上げられて、下肢にとろけるような痺れが奔った。  莉音は半分意識を飛ばしながら、ヴィンセントの雄を受け止めつづけた。荒い呼吸と断続的に漏れる甘い喘ぎ。ヴィンセントを包みこむ内壁が大きくうねって、眉根を寄せた莉音の口から、声にならない嬌声が漏れた。  躰が硬直して後孔がギュッと締まり、内部のヴィンセントの存在をよりはっきりと感じとる。瞬間、背後でヴィンセントがクッと低く呻き、一段と容積が増した。同時に、身体の奥に熱い迸りを感じる。莉音は細い声を放った。  体内ではじめて受け止めた熱い感触に、莉音は喉を仰け反らせてベッドに倒れこむ。  ヴィンセントがブルッと身をふるわせ、さらに強く腰を押しつけると、より結合が深まった莉音の内で、放たれた精が奥へ奥へと注ぎこまれ、言葉にならないオーガズムをもたらした。  快感はいつまでもつづき、硬直の解けた躰がビクンビクンと痙攣する。射精を伴わない、はじめての絶頂だった。

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