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第9話 別れ

リビングに戻ると、ミユさんの服を脱ぎ再び裸になった。 ミユさんは程なく、オレの体からスッと出てきた。 すると、ミユさんの体になった時と同じように、いつの間にか自分の体に戻っていた。 オレは、ミユさんに言った。 「どうだった? ちゃんと仲直り出来たんじゃない?」 ミユさんは少し不服そうにオレを見る。 「あの、お兄ちゃんにキスとかやめてよ。あたしの体でさ」 「いいじゃない」 「良くない! 絶対に良くない! あたしのファーストキスだったんだよ? それがお兄ちゃんだったなんて最悪! うわーん」 ミユさんは、大袈裟に両手で顔を覆う。 オレは、ため息をついた。 お兄ちゃんとキスなんて、キスのうちに入らないだろうに……。 オレは、先ほどのやり取りで気になっていたことを尋ねる。 「ところで喧嘩の原因って何? 描いた絵がどうのこうのって」 「あー、それは忘れて。いいの、いいの、こっちの事だから……」 ミユさんは、歯切れの悪い言い方をした。 オレは、気になって問いかける。 「へぇ。でも、ミユさんの部屋ってそのままだったよね。部屋にその絵があるのかな?」 「へ? ちょ、ちょっとやめてくれない!」 ミユさんは、慌ててオレを止めようとした。 「ミユさん、謙遜しなくていいよ。先輩と喧嘩するぐらいの自信作って事なんだよね? 興味あるな。こりゃ、確かめないと……」 「やめて!!」 という事で、ミユさんの反対を押し切りミユさんの部屋へと向かった。 一見、普通の女の子の部屋。 「ね? ほら! 何にもないでしょ!」 ミユさんは机にもたれて余裕の表情。 「ミユさん、机の引き出しを開けていいですか?」 「ダメー!」 オレが机の引き出しを開けてみると、沢山の紙が飛び出して来た。 その一枚を手に取り眺める。 そこには、全裸のイケメン達が互いの体を愛撫するシーンが描かれていた。 別の物では、漫画仕立てで最後までしている物もある。 「なるほどね。これは先輩も怒るよ。よりによって男同士のエッチのイラストとはね」 「あーん! もう、恥ずかしい!」 ミユさんは顔を押さえて首をブンブン振る。 「高校生が描くような絵ではないと思うけど……魅力的な表情だね。心なしか、このキャラとか先輩に似ているし、オレは好きだな」 「ごめんなさい。生きててごめんなさい! あっ、死んでいるんだった。ってか、ああ、恥ずかしい!」 オレの褒め言葉がとどめになったようで、ミユさんは部屋の隅に行って縮こまった。 オレは、正直そんなに悪い事だとは思ってないわけで、だから、気にしなくてもいい、とわかるように話題を変えた。 「ところで、これでミユさんは成仏出来るのかな?」 「うん。でも、しばらくこっちにいようかと思って」 ミユさんは上目遣いにオレを見た。 「どうして急に?」 「ちょっと、創作意欲が……いや、やり残した事があるなって」 「へー。もしかしてさ、オレと先輩のエッチを観察してそれをモデルに絵を描くとか? ははは」 「……」 冗談で言ったつもりが、何だか図星っぽくて気まずい空気が流れた。 オレは慌てて言った。 「なんてね! 冗談、冗談。でも、ミユさんは好きなだけここにいるといいよ。オレの背後霊なんだから。ちなみに、オレはミユさんにだったら、いろいろ見られたって平気だからさ」 「ううん。でも、そうだね……あたしお邪魔虫だもんね。よし! あたしは成仏するよ。だから、本当にお兄ちゃんの事、よろしくお願いします」 ミユさんは、頭を下げた。 オレはミユさんの手を取り言った。 「うん、わかった。ミユさんも、体に気を付けて元気でね! って死んでいるんだった」 「あははは。そうそう。じゃあね!」 ミユさんは、にっこりしながらオレの手を握り返した。 ミユさんはゆっくりと残像を残しながら消えていく。 そして、最後にふうっと、部屋の中を風が通り抜けていった。 無事に行ったのかな? オレはそれ肌に感じながら、先輩の元へ戻った。

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