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第2部・第14話 抱き締めたい (1/2)
一時的に少し関係がぎくしゃくしていたが、久しぶりに本音で話し合い、心から笑い合えた。勇樹 に誘われ、一緒にお風呂に入ることにした。バスタブに向かい合って浸かる。
「大の男二人が入れるサイズで、良かったよね」
「だろ? こっちは浅くて小さいバスタブ多いんだけどさ、日本人には物足りないんだよな」
世間話をしていた二人の間に、ふっと沈黙が訪れた。
「勇樹、ごめんなさい。アメリカに来るって決めたのは自分なのに、うまくいかないからって八つ当たりして。コミュニティ・カレッジに通わせてくれて、ありがとう。僕、真面目に勉強するね」
「いや、俺の方こそごめん。俺の仕事の都合で、ついてきてもらったのに、訓志 に対する気遣いが十分できなくて。訓志は若いんだし、勉強するのは絶対良いことだと思うよ」
お互い素直に謝り、わだかまりが解 けると、どちらからともなく身体を寄せ合い、唇を重ねる。中心が触れ合う。触れている部分がむずむずして、欲望が育ち始める。自然とそこに刺激を与えようと、訓志は悩ましい吐息をつきながら、身体をくねらせる。
「んっ……。勃っちゃったね」
「たまには気分変えて、お風呂でする?」
さり気なさを装っているが、勇樹の声は少し上擦っていて、興奮を隠せない。
「気分変えるんならさ……、今日は勇樹が下になって?」
訓志は妖艶な笑みを浮かべて囁いた。勇樹は途端に頰を赤らめ、小声で呟いた。
「……訓志がしたいなら」
勇樹との関係では、普段、訓志が受けているが、出張ホスト時代は主にタチとして売っていた。今でも相手に応じて、どちらもできる。訓志も男だから、相手を貫き、快感で声を上げさせたいという欲もある。
学生時代、今より細くて可愛いかった勇樹はネコで、アメリカ人からチヤホヤされていたと彼の旧友から聞き、これまでも何度かポジションを逆転したことがある。勇樹は、訓志の予想以上に感度が良かった。しかし、それが恥ずかしいらしく、自分から求めてきたことはない。
「じゃあ、お風呂であっためて、柔らかくしようね」
訓志が甘やかすように囁き、勇樹の腰を撫で下ろすと、この後の快楽を想像したのか、彼はふるっと身体を震わせた。そして自分から腰を浮かせる。
掌で優しく彼の引き締まった双丘を包み込むと、自分をリラックスさせようとしているのか、震える吐息を大きくつき、訓志の両肩に両手を乗せてきた。
「そんなに緊張しないで? これまで痛くしたことないでしょ? 身体も洗おっか」
甘い笑顔で微笑みかけ、手で泡立てたボディソープを滑らせて彼の身体を洗う。最初は慣れた快感で彼の緊張を解こう。
左手で緩やかに勃ち上がった勇樹自身を包み込んで上下に扱き、右手で双球を優しく撫でさする。気持ち良さそうな、穏やかで安定した吐息を確かめると、右手を会陰へと滑らせる。外側からも一番良いところに快感を与えておこう。揉み込むマッサージのように愛撫すると、勇樹は小さく呻いた。彼がピクピクと脈動する。
「はあ……っ、あ……っ」
硬さを増す雄茎を、さっきより少し強めに掴み、泡を絡めて扱くと、色っぽい喘ぎ声がこぼれ始めた。目は潤み、頬と眦 が薄紅を刷 いたように染まる。
(良かった。今日は勇樹、割とすんなり入り込めてるみたいだ。最初は、恥ずかしがっちゃって、なかなかムード出なかったもんな……)
勇樹がその身を委ねてくれるのは、純粋に嬉しい。背後のすぼまりに指を滑らせると、一瞬くすぐったそうな表情を浮かべたが、従順に訓志の愛撫を受け入れている。温かいお湯、温かい手で揉まれ、すっかりそこは柔らかくなった。
バスタブの湯を抜き、二人の身体についている泡をシャワーで洗い流す。
「……先に行ってて」
はにかんだように微笑む勇樹に、訓志は頷いて無言のまま口付けた。
バスルームから出てきた勇樹に手を差し伸べ、ベッドに招き上げると、いつもよりも激しく、訓志を押し倒してきた。
「今日は逆でしょ?」
ポンポンと彼の腕を叩く。彼は拗ねたように口を尖らせるが無言だ。受けに回る時の彼は、いつも極端に口数が少ない。
「いつも勇樹がしてくれてるみたいに、僕も勇樹を気持ち良くしてあげたい」
肩に乗せられた彼の手をほどき、コロンと横向きに横たわらせる。背後から、勇樹の耳朶やうなじに、チュッと音を立てて小さなキスを落とす。耳までもが羞恥に赤らんでいる。可愛い、と思った。
ローションは、何度か手を擦り合わせて温めた。スプーンを二枚重ね合わせるように背後から寄り添い、繊細な花びらを撫でて押し広げるように後孔周辺を慣らしてから、指を忍び込ませる。そこは柔らかく、すんなり訓志の指を受け入れる。しばらく指をそのままに、肩や背中にキスしながら話し掛ける。
「勇樹も僕を受け入れてくれて、すごく嬉しい。久しぶりだけど、ここ、柔らかいよ」
「……特段、何もしてないんだけどね」
ようやく、ポソッと勇樹が言葉を発した。
「運動してるからかな? 筋肉が柔らかいのは。……勇樹の身体つきって、男らしくて、でもしなやかで、すごくセクシー」
内壁をそっと撫でるように手前に指を引く。
「だって、こっちは車社会だから。真面目に身体動かさないと、すぐ太っちゃう……」
彼の声は快楽で少しずつ上擦り、掠れ始めている。
「……あ……っ」
かすかな喘ぎ声をあげ、僅かに身体を震わせる彼の姿に、訓志も興奮する。口が渇く。汗をかいているのだろうか。舌なめずりのように舌を出し、唇を舐める。思い付きで、彼の背中もちょっと舐めてみる。少し汗でしっとりしていて、しょっぱい。彼は小さく嬌声をあげて背中を仰け反らせた。肩甲骨周りの筋肉が動く。逞しい肢体を組み敷き征服する悦びに、訓志の背筋はぞくぞくする。
「はっ、あんっ……! ちょ……、訓志……」
彼の身体を傷付けないように、丁寧に後孔を解していく。最初の指が馴染んだので、一度指を抜き、二本の指を絡めるようにして再度内壁に触れる。彼の良いところに触れると、優しく撫でるだけで、勇樹は身体をくねらせ始めた。
「んっ……。はぁああっ……。ああ、ねえ、やだ」
「勇樹、何がやなの……? 気持ち良くない?」
「き、もち良いけど……っ。良すぎて……」
「もう少しだけ。勇樹が後で痛くならないように。ね?」
(多少恥ずかしいほうが興奮するのか? うふっ。勇樹って、マゾっ気あるのかな?)
優しい声であやしながら、訓志は、勇樹の弱点見つけたりと、うっそりとした笑みを浮かべた。中で指を回転させたり、開いたりするたびに、勇樹は吐息交じりに控え目に喘ぎ、身悶える。
「挿れて良い? 一緒に気持ち良くなろ?」
小首を傾げて提案すると、勇樹は茫然 自失 の表情で頷き、仰向きに寝そべった。彼の長い脚を開かせる。しっかり筋肉の付いた腿は、恥ずかしそうに目を伏せる長い睫毛とあわせて、草原を走り回るインパラ等の野生動物を思わせる。
普段は冷静な勇樹が淑 やかに乱れる様は、煽情的ですらある。若い訓志は興奮し、反り返るほど勢い良く屹立している。コンドームを被せ、思い付いたかのように、膝立ちで勇樹の顔の上に立つ。
「ねぇ、舐めて?」
彼は素直に訓志の中心に口を寄せ、舌を出し、アイスキャンディーのように熱心に舐める。視覚的な刺激にも追い立てられ、訓志も思わず声をあげる。
「ああ……ん……。勇樹、すごい上手」
この後の行為を連想させるように、軽く前後に腰を揺すり、勇樹の口内を犯す。想像でエロティックな気分を盛り上げるのが目的だから、喉の奥を突くほど深くはしない。
この二人にとっては珍しい構図だから、勇樹も興奮したようだ。口内の空気を抜いて、訓志を吸い上げてきた。そこに急激に血液が集まり、硬く熱くなる。
もう十分な硬さだ。口内からそっと訓志自身を抜き取ると、ローションを塗り付ける。更に勇樹の前と後ろに愛撫を加えてリラックスさせ、そっと先端を挿入した。勇樹は、一瞬ぴくりと肩を震わせたが、優しく声を掛けながら肩を撫でると、表情を和らげ、甘えるように訓志の首に手を回して引き寄せる。口付けながら肌を合わせると温かく、彼の鼓動が伝わってくる。二人は微笑みを交わす。
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