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日常から過去。-陽輝視点-
淡い水色の下で歩く 陽輝と澪。
先程澪がボソッっと行ってきますと呟いた。
この言葉を聞く度に、澪の家に相応しくない家にそんなことしなくていいのに。と。思う。。
陽輝は、陽輝の家のことをあまり話さないが中々酷い仕打ちを受けていると思う。正妻や父からの無視は、もちろんのこと、使用人にまで無視させたり。。庭で澪と紫雨家の者が会えば聞こえるように存在否定の言葉。食事は用意させず、月に1度程、澪が父か正妻に土下座をしてお金を貰い使用人のキッチンで1人料理をして食事としている。服は、正妻の息子が捨てた服をゴミ置き場から見つけ洗い使用しているらしい。澪の部屋には、ローテーブルとブランケットしかない。布団やベッドがないのだ。授業中に良く寝るのもその所為だろう。
どんなに、悲しく心おれる状況なのだろう。。
しかし、澪は俺に言わない。
紫雨家に使用人として密偵を送らせて近況を報告させて、やっとどんな目にあっているのか、わかるのだ。。もっと俺のことを頼れば良いのに。。。せめて澪が俺の家やホテルに泊まることを承諾してくれれば。。澪はどうも人に頼りたくないと強く思う傾向がある。母が死んだのは、自分のせいだと考えてているせいかもしれない。しかし、俺に起こしてもらったり、ネクタイをつけてもらったり、、小さい頃から飢えている甘えを時折俺だけに見せるのが心地いい。いや、澪は甘えたつもりはないだろう。俺が何度もやりたいと言い続けて、説得するのが面倒くさくなって承諾したのだろう。
澪と俺は、小学校2年のクラス変更で一緒になった。その頃の澪も今と同じ誰にも心配かけるものか と笑顔を周りに振りまいていた。俺は、組の子だからと遠巻きに見られて怯えられていた。そんな俺をクラスの輪に引き込もうと躍起になっていたのが、澪だった。どうも皆仲良くが平和だと思っているアホな奴という認識だった。もちろん、ダルかったので、軽くあしらう日々が続いた。
ある訓練で初めて人を銃で射ち、寝ように寝られない夜だった。確か小3の夏だったと思う。寝付けない俺は、暑苦しい護衛をつけないために、無断で夜の公園をぷらぷらしていた。道外れた、大木の影から人の気配がした。
ヒッーーーヒッーーー どうやら、泣いている。酔っ払いかと思ったが、妙に幼子の声に興味を持ち、覗き込んでみる。
目を腫らしてうさぎにしている澪だった。。
澪はすぐに俺に気づき ビクッとして 洪水のように流れる
涙を袖ですぐに乱雑に拭こうとする。
「ーえぅ、霜司君?どーしー」
澪が質問する途中で俺は、思わず抱き締めた。涙でいっぱいになった瞳で見上げられたら、本能的に体が動いていたのだ。俺も訳の分からぬまま強く抱き締めた。
しばらくして、
澪は、溜めていた思いを吐き出すようにひゃっくりをあげながら泣いた。
どのぐらいたったのだろう。抱き締めた澪が急に重くなって寄りかかってきた。覗き込むと、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔ですやすやと寝息をたてていた。安心しきったその表情に俺は、
ゾクッとしたーー
クラスメイトからも年上の部下たちにも恐れられていた澪には、初めて味わった感情だった。
これは、なんだ。友情。愛情。そんな簡単な言葉じゃない。俺の腕に抱かれ無防備な澪。
ーーーホシイ。コイツノスベテガー!ーーー
他の誰にも頼らないで、俺だけに甘え俺だけを見て、頼って、触らして、、とにかく、澪を俺だけの物にしたいと思った瞬間だった。
にしても、クラスで見せるあの能天気な笑顔の仮面はなんだ?
その疑問は、すぐにわかった。
澪の親も心配しているだろうから、部下に連絡をいれ澪の家を探しあて、車で送った。
澪の母らしき人が出てきたので、澪を渡した。その瞬間、その女は澪を揺さぶった。
「起きなさいよっ、呑気に寝て! あんたごときが、わたくしに迷惑をかけているのよっ」
澪は、揺さぶられた瞬間に女の腕から抜け出し、おでこを地面につけた。
「ごめんなさい!ーーごめんなさいっ」
俺は咄嗟に
「おいっ、自分の子供に何してんだよっ」と食ってかかった。
女は答える「ふんっこんなの私の子じゃないわよ!卑しい女の子供よ!母が卑しければ、子供も子供ね、よりによって冬山組の息子に縋っ て だーれも、お前なんかいらないんだよっ」
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