29 / 59

カーマインに染まったー陽輝ー

高層ビル街の中にそびえ立つ一角。 ガラス張りの建物の側面が、夕陽によってきらめいていた。 その最上階のある一室。 黒光りしたソファーが向かい合っている。 ガタイのいい雄が2匹、腰をかけていた。広い部屋の中に他の人間はいない。 1人ーー少し顔面にシワがあるが、筋肉のせいか若く見える。ーーーが、口を開く。 「陽輝よ、お前が囲っている男を 無理矢理引き離そうとは、しないさ。 お前が、あの子の為にのし上がってきているのは、よくわかっている。」 若い方の人間、つまり陽輝は、冬山組の総裁である父と対面していた。 陽輝は、澪の傍にずっと居たいが、仕事や学校などをこなしていかなければならない。 ーー全ては、澪を俺のものにしておくためだ。 今回は、こなす事の1つである 父からの命令でここに居る。 澪を閉じ込める前に、父には人を通じて話を通してあったのだが、対面で話たいと言うので渋々父の話を聞いていたところだ。 父は、ひと息おいてから、再び言葉を発する。 「お前は、優秀だ。ヤクザ家業だけでは、早々に組が傾くと判断し、裏から会社を立ち上げた。今でも業績は、組一番だ。 だがな、そんなお前にあの子の存在は、 ーーーーーーー言わば、アキレス腱だ。」 父の言葉に、表情管理を徹底していたが、眉毛を ピクリと動かす。 一瞬、いや数十秒だろう。張りつめた空気が部屋を 覆う。 ふぅ.....。 父がため息をついた。 「分かっているだろうが、、気持ちが変わらぬのなら 絶対に逃すなよ 」 分かっていると俺は、頷いた。

ともだちにシェアしよう!