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カーマインに染まったー陽輝ー
高層ビル街の中にそびえ立つ一角。
ガラス張りの建物の側面が、夕陽によってきらめいていた。
その最上階のある一室。
黒光りしたソファーが向かい合っている。
ガタイのいい雄が2匹、腰をかけていた。広い部屋の中に他の人間はいない。
1人ーー少し顔面にシワがあるが、筋肉のせいか若く見える。ーーーが、口を開く。
「陽輝よ、お前が囲っている男を 無理矢理引き離そうとは、しないさ。
お前が、あの子の為にのし上がってきているのは、よくわかっている。」
若い方の人間、つまり陽輝は、冬山組の総裁である父と対面していた。
陽輝は、澪の傍にずっと居たいが、仕事や学校などをこなしていかなければならない。
ーー全ては、澪を俺のものにしておくためだ。
今回は、こなす事の1つである 父からの命令でここに居る。
澪を閉じ込める前に、父には人を通じて話を通してあったのだが、対面で話たいと言うので渋々父の話を聞いていたところだ。
父は、ひと息おいてから、再び言葉を発する。
「お前は、優秀だ。ヤクザ家業だけでは、早々に組が傾くと判断し、裏から会社を立ち上げた。今でも業績は、組一番だ。
だがな、そんなお前にあの子の存在は、
ーーーーーーー言わば、アキレス腱だ。」
父の言葉に、表情管理を徹底していたが、眉毛を
ピクリと動かす。
一瞬、いや数十秒だろう。張りつめた空気が部屋を
覆う。
ふぅ.....。
父がため息をついた。
「分かっているだろうが、、気持ちが変わらぬのなら
絶対に逃すなよ 」
分かっていると俺は、頷いた。
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