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鈍色。

陽輝の笑顔から、自分の行動が間違っていなかったと安心する。 陽輝に捨てられてたくないから、陽輝の望むようになろうと、あの行為は陽輝の望むようになるための行為だと澪は、静かに認識した。 理由付けしないと、辛い苦しみはボクを壊してしまうから。小さい頃から、そうしてきたーーー。家族がボクを歪み嫌うのは、ボクが産まれたことで母さんを殺してしまったから... だから、今回も大丈夫。ボクは、大丈夫。1番怖いのは、捨てられて誰からも認知されなくなることだから...それさえ避ければ大丈夫。 ただあの行為は、過ぎる快楽に理性が曖昧になって、自分が暴かれるようで恐ろしい。本当は、ボクの存在を認め受け入れて、何もしないでもボクを愛して欲し..と願っていることがーー..ダメだ..考えるのはよそう。ボクなんかには大層な願いすぎる。願っても意味のないことは学んでいる。 陽輝は、澪を抱きしめながら、頭を撫でる。 ーー気持ちい。安心する。 陽輝は、ボクをしばらく撫でてから、動けないボクを横抱きにして、バスルームに向かう。 抱っこなんてされた事なんて、記憶に無かったから、人の温もりがユラユラと揺れることがこんなにも暖かい気持ちにさせるなんて知らなかった。 酷く犯された事の衝撃が大きかったから、少しばかり忘れていたけど、陽輝はボクに対して下僕か?ってぐらいに尽くしてくるタイプだったなぁ.... なんて考えてたら、何処からか出してきたバスチェアに下ろされて体をふわふわな泡で洗ってくれる。 「可愛い〜」「ここ...ホント小さい..フフ(いや、うるさいな..!)」とか、ひたすらにボクを愛でてくる。 陽輝が冷たい陽輝じゃないのが分かってうとうとしてきた。 あぁ...なんかこの部屋に来てからどこか、視界が鈍色だ。小さい頃にもどったみたい。 ハルに会って世界が色づき始めたんだっけ....色づいた世界は楽しかったなぁぁ.. ーーハルの傍に居たい。 まだ小さいハルに公園で出会った夜に、折檻と称し薄暗い納屋に閉じ込められてしまったことがある。 扉を叩いても..手が血だらけになるほどに壁を掻きむしっても...時折..使用人の声や家族の声は聞こえるのに..ボクの声も聞こえているはずなのに..皆、笑っていたんだ... 1人暗闇の中で認識されないのはとても怖くて寒くて恐ろしいこと。 ーーあぁ.納屋から光が差し込んで手を差し伸べてくれた 初めて顔の見る使用人の手は、暖かったなぁ.. なんて..考えて久しぶりに思い出してしまったと後悔する。 夢の中では、楽しい思いをしたいから、嬉しい思いをした事を思いだす.. 紫苑さんの笑顔ーー..いや、ダメだ..ボクなんかが想っていい相手じゃない。 陽輝..ハル....ハル...ハルの笑顔..「 ハル...」 「ん?」陽輝は、鈍色の中でも笑顔を向けて答えてくれる。 ハルが笑ってる...嬉しい.. 「おねむなのかな? 寝ていーよ」優しい声色でボクの瞼を閉じ、そのまま撫でてくれる。 ああ..傍にいてくれるんだね..捨てないって信じたいから..信じてるから.. ボクは、安心して夢の中へと引きずり落とされていった。

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