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今まで感じたことのない柔らかさに包まれたまま眠っていたのに、やけに眩しい光が差し込んで来て無理矢理意識を浮上させる。 唸りながら起きた時真っ先に目に入ったのは白に近い銀色の髪だった。 「……?」 誰だろう、否、ここはどこだろう。 沈み込んでしまいそうな程に柔らかいベッドにシルクのシーツ、やたらデカいベッドにそんなベッドが小さいとすら思える部屋。 そして、甘い匂い。 「っ!!!」 一瞬で意識が覚醒し飛び起きる。 全身が痛みで悲鳴を上げる中腕を伸ばしたのは頸、どこに触れても歯形がない事に俺は心の底から安堵の域を吐いた。 「噛まれたとでも思ったか」 「、え」 明らかに侮蔑を含んだ声色に今度は違う意味で体が硬直する。ああそうだ、俺は昨日こいつとヤってしまったんだった。 思い返すと有り得ない事だらけで頭が痛む。深く息を吐き覚悟を決めて声の方を向くと俺はまた固まった。 「………」 月の光を集めたような銀の髪に宝石を嵌め込んだかのような紫色の目、褐色の肌に均整のとれた体付き。髪と同じ銀色の丸みを帯びた耳と尻尾は、その人が特別であるということを表していた。冷たい顔と目をして俺を見ていたが、その氷の様な表情が一層そいつの神秘性を引き立てていて、その人は間違いなく今まで出会った奴らの中で一番綺麗だった。 ああでも、確かにこんなにきれいなら、 「…かみさまみたいだなぁ」 思わず溢れた言葉に神さまっぽいやつの顔がこれでもかと言うほど不快な表情を浮かべる。俺としてはあんまりにも恥ずかしいことを言ってしまったもんだから正直穴があったら入りたいレベルだった。 「本当にこの国の奴らは噂が好きらしいな」 嫌悪感と呆れと、色々な感情が混ざった低音が耳に届いたと同時に俺は息が出来なくなった。 「が…っ、は、」 「仮にも王族に対して有りもしない噂を吹聴し、俺を侮る。昨日の奴らもあの場で殺しておけば良かった」 ベッドに押し付けられた状態で首に大きな手が掛けられた。間髪入れずに首を絞められ俺は何が起きたかわからないまま、ただ足をバタつかせる。 「おまけに抑制剤も飲んでいない召使を俺の前に差し出すとはな。しかも骨と皮だけの、明らかにΩの中でも劣等種のガキを、この俺の前に…!」 「ちが、おれは、ぐうぜん…っ!」 「偶然?俺の気配を感じた途端発情した事が偶然だと?嘘ならもっとまともな嘘をつけ」 ギリギリ、と音がしそうな程の強い力で首を絞められ続け段々と視界が霞んでいく。 首を掴む腕に爪をたてるがそれでも解放されるどころか更に強く絞められた。 「…このまま骨を折ってやろう」 俺をコケにした報いだ、耳元で囁かれ更なる圧が掛かったのと部屋の扉がけたたましく開かれるのは同時だった。 「そこまで!!!その子はボクが連れて来たんだよ!」

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