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01ー13
数時間振りに視界が開けた時、外は真っ暗だった。鼻に届く慣れない匂いの中に遠い昔に嗅いだことのある豊かな草のものがあり、それと肌に感じる温度で今が夜なのだと言うことがわかった。
さく、と草を踏み締める音が聞こえる。
スラムではあり得ない音に自分の耳が勝手に動くのを感じながら、俺はトレイルに俵担ぎにされて運ばれていた。
「こうでもしないとソロ君絶対逃げるでしょー?まあ歩く手間が省けたって感じで気楽にしててよ」
「こんな状態で気楽にできるヤツいんなら見てみたいわ」
腹部に減り込むトレイルの肩が地味に痛い。けれどそんな事を言ったところでしょうがない、と俺はもう諦めていた。
あの馬車の中で俺とこいつは喧嘩した。とは言っても俺が一方的に怒鳴るだけだったが、こいつはノーの一点張り。
絶対に俺をあの白い奴のところに連れて行くらしい。
「…アイツも俺に会いたがって無いんだろ?なのになんで連れて行くんだよ。逃せねえって言うなら地下牢にでも繋いどけっての」
「ソロ君ってさ、ちょっとびっくりすること言うよね。そんなに嫌なのー?まあ嫌って言っても連れて行くし、ヴァイスにも会って貰うけど、さ!」
「っ、」
急に腹部に対する圧が増したと思ったらトレイルが俺を担いだまま跳躍し、城の壁に捕まっていた。
「はぁあ!?」
「わ、わ、しーっ!しーっだよソロ君!これ結構ヤバいんだからね!?」
「んなもん見たら分かるわっ!なんで普通に入らねえんだよ!」
「えー、普通に考えて無理じゃなーい?俺だけならまだしもソロ君一緒とかリスキーだもん。憲兵に捕まったら即アウトっていうかー」
「…おい待て。お前らが俺を拉致したんじゃねえの?」
「どこの世界に会いたくないやつ拉致して来いって言う奴がいんの?」
顔は見えないが、気配でわかる。
トレイルがとんでもなく笑っているということが。
「俺の独断ですっ」
「っざけんじゃねえぞクソハイエナ野郎!!」
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