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01ー16※
あの日の記憶は殆ど無いに等しい。
ただ気持ち良くて、でも怖くて、どうにかなりそうな感覚の中ただ白虎の男と交わっていた。
だけど、今は違う。
「ああほら、乳首が勃ってきた。敏感だなぁ、番殿?」
猫科特有のざらついた舌で胸の飾りを舐められて自分の口から信じられないほどの甘い声が漏れる。
それにコイツは心の底から楽しそうに笑って、ワザと耳元で俺の痴態を話す。
「ぁ、ふ…っ、ゃ、いやだ…っ、触るな…!」
うまく力の入らない腕で肩を押すが噛まれた自分の肩が痛むだけで自分に覆い被さる男が離れる事はない。
喉奥を愉快そうに鳴らしながらゆっくりと、甘い手つきと声で快感を刻み込んで行く。
側から見れば愛のある行為だと思うのだろう。
だけど俺には、これ以上無いほどの苦痛だった。
「口でどれだけ嫌がっても身体は正直だな番殿。お前の孔はこんなに濡れて、今すぐにでも俺に挿れて欲しそうだ」
「ーーっ!っ、は、ぅ…っ!ちがう、ちが…っ!」
「違わないだろう?」
「ぁ、んんんっ!」
耳を塞ぎたくなる様な音が俺の体から聞こえる。すんなりとアイツの指を飲み込んで、嬉しそうに締め付けていた。
中を拡げようとする指もあまりに優しくて、一々俺の反応を伺って次へと進めていくコイツがただただ憎かった。
「またイったな。さすがはΩ、その浅ましさはどいつもこいつも似たようなものだな」
そう思うのに、身体は悦んでいるんだ。
コイツに触れてもらえるのが嬉しいと、もっと欲しいと、叫んでいる。
生きているだけで幸せだと思っていた。
それだけで儲け物なのだと、生きていればなんとかなるのだと、そう信じていた。
そう信じないと、前を向けなかった。
だけど、
「…も、いやだ…っ!いやだ、いやだいやだぁああ…っ!」
足を開かされて、あの男の熱杭が俺を貫いた。
痛みも無く、強烈な匂いで俺は感覚の全てが快感で染められる。
意識を飛ばせたらいいのに、それをコイツは許さなかった。
「…ッ、…いい、ザマだなぁ、番殿。これだけ拒絶しているのに、お前は、俺を受け入れるしか出来ない。…無様だな」
パン、パン、と肌がぶつかる乾いた音が豪奢な部屋に響いた。強制的に発情させられた身体は与えられる快感を簡単に受け入れて、口からは女の様な喘ぎ声が引っ切り無しに溢れでる。
どうして、俺だけ狂うんだ。
どうして、なんで、どうして。
腹の奥に熱い感覚が広がるのと、俺の意識が落ちるのはほぼ同時だったと思う。
生きるためなら何でもやった。
だけどこんな目に会うなら、今すぐ死んでしまいたい。
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