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04ー3

ガチャン、と高級な食器が音を立てて揺れ危うくソルフィにかかる所だった紅茶をギリギリのところでリドリウスが受け止める。 「嗚呼よかった。君に火傷なんてできたらどうしようかと」 「ヴァイス殿下が城下に行っただと!?」 どこまでも甘い声で自分の番を細やかな障害から守った事を褒めてくれと言わんばかりの表情を浮かべていたリドリウスの言葉を彼の番であるソルフィが滅多に出さない大声で遮った。 それに心なしか耳を垂れさせるリドリウス・ラルゴ、虎の国の宰相閣下を見て今し方ソルフィに疑問をぶつけられたトレイルは複雑な顔をした。 「あー、今日に始まった事じゃないですよー。ソロ君が大怪我して城から出ていっちゃったあの日からヴァイスは時間を見つけては城下に行ってます」 トレイルはとても混乱していた。 目の前にあのソルフィがいる事に顔には出さないがとてつもなく混乱していた。 リドリウス宰相閣下とソルフィといえばこの国きってのビッグカップルであり同時に悲恋の象徴とされている程の有名人だ。 実際にソルフィと会った事はなくともその姿はあまりにもこの国では有名だった。 「んんっ、トレイル。あまり私の番をジロジロと見ないでくれるか。私のソルフィが減ったらどうしてくれる」 「リドリウス、頼むから今は黙っていてくれないか」 おかしい、ボクの知っているリドリウス宰相閣下じゃない、とギャップにさらに混乱しそうになるがこのままではいけないと一度深く息をがいて肺の中を空っぽにし、新鮮な空気を取り込む。それでなんとか意識を切り替えて前を見据えた。 「ソロ君の捜索は必要ないってアルヴァロ様が判断した日からヴァイスは毎日ソロ君を探してます。生きてくれていたらそれでいいって、そう言ってました」 「……運命の番ならば相手が生きているのか死んでいるのかは感覚でわかる」 「…そうなのか?」 「そうでなければ君がいなくなった十年前のあの日に私はこの世から消えていたさ」 「…リド」 トレイルはおかしい、と思った。 今多分自分はすごく真面目な話をしたはずなのにどうしてこんな甘い空気になってしまったんだと。これが運命の番同士のなせる技なのかと、トレイルは再び混乱しかけた。 「…悲恋の象徴とか、絶対嘘だよこれ…」 ボソ、と呟いた低い声は誰に拾われる事なくなんとも言えない空気の中を溶けていった。 ヴァイスは普段ああ見えて多忙なためそろそろ戻ってくる筈なのだが、今日はまだ戻って来ない事をトレイルが疑問に思い空気を読んでいつその事をこの二人に伝えようかなと思い悩んいる間に、この話の中心人物であるソロとヴァイスは重大な局面を迎えていた事をこの時ここにいる三人は知る由もなかった。

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