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05ー2
そんなこんなで俺がコイツと会う、と言うよりかは顔を合わせる機会が増えていた。
その裏ではきっとトレイルが八面六臂の大活躍だったんだろうなと思うとなんだか可笑しくて俺はアイツの後ろでふへ、となんとも気持ちの悪い笑い方をした。
それに反応したオウジサマの尻尾がひょこりと先っぽを起き上がらせてそれと同時に本体も俺を振り返るがその途端に俺は笑みを引っ込めた。
「なに見てんだよ」
「お前が気持ち悪い笑い方するからだろうが」
「気持ち悪いって思うならさっさと帰れ」
「それは俺が決めるんだよ」
「はー、出た出た。人の話聞かずに全部自分の思い通りにやろうとする貴族ありがちなやつー」
ハッと鼻で笑い肩を竦めながら小馬鹿にする様に言えば眉間にグッと深く皺を寄せたアイツに睨まれるが、その尻尾がタシタシと地面を叩く様はいつ見たってなんだかその見た目とそぐわず笑ってしまう。
「なに笑ってやがる」
「別に」
「何にも無くて笑うのか」
「うるせえな俺が何で笑ったっていいだろうが」
互いの喉からグルル、と威嚇の音が鳴り出して少しすると聴き慣れた足音が二つ近づいて来ているのが分かり耳をぴくっと揺らし目線を街の方へ向ける。
アイツも気がついたのか明らかに面倒くさそうな顔をして立ち上がろうとしたがそれよりも早く可愛らしい声が耳に届いて俺は笑いアイツは大きな溜息を吐いて再び地面に腰を下ろした。
「オウジサマーーー!!」
「おいイチ走るなー!」
ドゥッ、と結構な勢いでアイツに突進するイチとその後ろから息を切らして追いかけて来るニイ。
苦しそうな呻き声を上げてイチの突進に耐えたソイツはイチの頭を持ちべりっと腹に埋まる顔を引き剥がすがそのキラキラと輝く目にとてつもなく弱いのかいつもぐっと顔を顰めるだけで怒りもせず、仕方がなく乱暴に髪を撫でる。
それにキャッキャと笑うイチとそれを複雑そうに見るニイに俺が手招きをして抱き締めた。
小さい体も段々と大きくなっている事を抱き締める事で感じ、もう少しでもっとデカくなるのかと思うとなんだか惜しくて思いっきり抱き締めてやれば今度はニイが笑い出す。
「ソロ!くすぐったいってば!」
「はー?んな事ねえだろいつも通りいつも通り」
「ちが、やめろってばくすぐんなーっ」
爽やかに晴れ渡る空と心地の良い風が吹く庭に楽しい声が木霊する。口を大きく開けて尻尾を揺らしながら笑うニイが可愛くてグリグリと頬擦りしている一方でイチたちは何やら話していた。
「オウジサマ、すごい顔してる」
「あ"?」
「ふふん、ニイがうらやましいんでしょー?私にはわかるよっ」
「違う」
「えー?だってオウジサマの尻尾、」
そう言われて自分の尻尾を見たオウジサマはこれ以上ないほど顔を顰めて見せた。
そこには明らかな苛つきを持って揺れる尻尾があり、自分の身体の一部なのにその事に全く気付け無かった事に言いようの無い感情を覚えると同時に今度は自分の意思でそれをたしん、と地面に打ち付ける。
「男はスナオじゃないのよって、ミシュリーが言ってたけどホントだね」
「うるせえ」
「きゃーっ」
がう、と耳を噛む仕草を見せたソイツを見て俺がとんでもなく冷めた目をしていた事をアイツは知らない。
「…ロリコ」
「違う」
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