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05ー4

「いやほーんと思うけど、君らボクのことなんだと思ってるの?ボクお悩み相談室じゃないんだけどー」 優しい甘い匂いが漂うパステルカラーで彩られた店内で顔を突き合わせている男が二人。俺とトレイルなんだけどさ。 テーブルの上には店主である兎の獣人ミシュリー特製のホイップがこれでもかと言うほどに乗ったパンケーキが二つと紅茶。やはり貴族然として綺麗なナイフ使いでケーキをカットして口に運んでいくトレイルを眺めながら俺はその言葉に息を吐いた。 「…君らって事は、アイツもなんか言ってんの?」 「ヴァイスに至っては毎日だよ。俺の友人あんな女々しかったっけ?距離の詰め方がわからないだのどうすればいいかわからないだのイチちゃんとニイ君がいる時しかまともに会話もできなければ顔も見れないとか。え、何あれ。もう一回言うけどボクの主人ってあんなに女々しかった?」 「こーらトレイル。あんまりヴァイス様のことを悪く言うんじゃないよ」 「けどこれマジだし。さすがにびっくりするよ」 マジなのか、と俺はテーブルの上で組んだ手に額を押し当てた。 俺は別に現状維持でも一向に構わないのだ。それに多分俺にはここが限界の様な気さえする。 あれ以上はもう近づけない、近づこうとすれば体から嫌な汗が吹き出して呼吸が乱れる。本能とは違う、俺としての何かがアイツのことを拒絶した。 こうなるなら、やはり会わない方がよかったんじゃないかと思えてきて俺は自然と溜息を溢していた。 「ソロも溜息ばっかりつくんじゃないよ!そんな暗い顔ばっかりしてるからあの子たちもあんたをずっと心配してんのさ!」 「……だよなあ」 「それもこれも全部ヴァイスのせいなんだからヴァイスが土下座すればいいんじゃない?」 「お前もう適当になってんだろ」 仕草は優雅な癖に大きくカットしたクリームがたっぷり乗ったパンケーキを一口で口内へ収めて咀嚼するトレイルを胡乱げに見ながら言えばゴクッとそれを飲み込んだトレイルはしっかりと頷いて見せた。 「自業自得だよ。ボクも、もちろんヴァイスも。ついでに言うならリドさんやソルフィさんもね。みんなが君の意思を無視して自分の気持ちだけで動いた結果ソロ君の心に修復不可能な傷が出来た。そうでしょ?ボクたちはそれを癒す術を知らない。だからすべての事に及び腰になって、結果こんな状態。でも、ボクはそれでも」 「トレイル、あんたはもう黙ってな」 言われた言葉が事実なだけに俺は何も言い返せず、けれどそれがどれだけ俺が勝手なヤツなのかと思い知らされている様でどんどん目線が下がって行く。どうすればいいのだろうかと途方に暮れかけた時パシッと小気味のいい音が聞こえて耳を動かすとそこにはトレイルの頭を小突くミシュリーがいて俺は目を丸くした。 「…トレイルの言う事は間違ってないんだろうけどね、それでも言い方ってのがあるんだよ」 やれやれと肩を竦めて見せるミシュリーを見ていると彼女はにかっと豪快に明るく笑って見せてくれた。 「あんたもそんな顔しないの!あんた達の間に何があったかは知らないけど、自分に非が無いって言えるなら胸張ってりゃいいのさ。だけど、少しでも胸につかえるものがあって苦しいならちゃんとそれを整理して吐き出してご覧。そんで、ふんぞりかえってやればいいのさ。なんてたってあんたはあのヴァイス様に惚れられてんだろ?そんな男を尻に敷くのがΩの特権だよ!」 バチーンと音がするほど華麗にウィンクを決めてくれたミシュリーの言葉に俺は目をまん丸にして口をぽかんと開けていた。 「………は…?」

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