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05ー18
久しぶりに会うその人は記憶にあるものより少しだけやつれていて、俺は思わず笑ってしまった。
やつれたヒトを見て笑うなんて自分でもどうかと思うが、それでも笑ってしまったものはしょうがない。
「なんて顔してんだよ、ジイさん」
今すぐにでも泣いてしまうんじゃないかと言う程表情を歪めて、何があっても豊かで艶のあった毛並みは乱れさせ俺が腕を広げるなり今までにない速さでずかずかと近付き思い切り抱き締めてくれた温かさにやはり笑いは止まらなかった。
「スラムより確実にいい生活してんのに痩せるとかどういう事だよ。そんなに俺が心配だった?」
「…当たり前だろうが、」
その言葉に更に抱き締める力を強めたジイさんに流石に痛いと呟けばすぐに力は弱まったが、それでも腕が離れる事はなかった。
仕方がないなと息を吐きながら俺はジイさんの背中を撫でていた。
「…もう会えないのかと思った」
「え、ぁー…、まあそう考えるよな」
一瞬首を振りそうになったが自分の性格を思い出してみると確かにそうだよなと、言葉を濁す。
その様子に意外そうにしたのはジイさんで、ようやく満足したのか俺から手を離すとじっと顔を見てきた。
「何かあったか」
「…ん、それなりに」
「…そうか」
ジイさんのシワだらけの枝みたいな手が俺の包帯に巻かれた腕を取って痛ましげに眉を寄せるが、そこから先へは踏み入ろうとして来ない。
俺はジイさんのこういうところが好きだ。
だけど、この優しさに今日は甘えられないのだと俺は深く息を吸った。
「…聞きたい事があるんだろう」
「ぁ、…あー、うん」
言おうと思って構えた所で先に声をかけられて思い切り勢いが失速する。
「…殿下からお前を頼むと言われてな。…お前からしてみれば、余計なお世話かもしれんが」
「いや、俺が昨日アイツに頼んだ。ジイさんと話したいって」
「…お前が?」
やはりジイさんもトレイルと同じ様な反応をしたため苦笑を零す。けれどそれが当たり前の反応だという事もわかっていた。
こくりと頷いてからへらっと力無く笑って見せればジイさんの綺麗に整えられた眉がぴくりと跳ねた。
「…ジイさんの事教えて」
「、…ソロ、」
「……俺、ジイさんのこと知りたい」
情けなく震えてしまった声にまたジイさんがくしゃりと顔を歪めた。離れたばかりだというのにまた俺の背に腕が回って、強く抱き締められた。
「…ああ、なんでも聞いてくれ」
俺と同じくらい震えている声にどうしたって笑ってしまう。だって、笑っていないと俺はきっと泣いてしまう。
でもこれはきっと嬉しい涙だ。
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