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06ー1

どの道を選んだとしても味方でいる。そう言ってくれたジイさんのことを俺は今度こそちゃんと信じられるような気がしていた。 「おい、本当に大丈夫なのか」 「大丈夫だからそこから一歩も動くな。いいか、絶対だぞ。絶対だからな!」 「頑張れソロー!」 「オレは嫌ならやめても良いと思う」 だからとりあえず、俺なりの一歩を踏み出そうと思ったんだ。 「ソロ、あまり無茶は…」 「いやいや見守りましょうよー。頑張れソロくーん」 だけどな。 「…焦ったいけど初々しくて良いもんだねえ」 俺は秋だというのに汗をぐっしょりとかいて疲労困憊といった顔で背後を振り返った。 「見せ物じゃねえんだぞ…!!」 そこには何故かいる見知った面々。 どいつもこいつもにこにこしている為なんとも言えないが、ただ一人ジイさんだけが対応に困っていてなんとも言えない気持ちになった。 「…散れ。変に刺激するな」 「俺は野生動物じゃねえぞ」 「似たようなモンだろうが」 ギリギリ手を伸ばしても触れられない距離にアイツがいる。不安そうに眉を寄せて俺を見ているが尻尾はゆらゆらと揺れていた。 「…クソ、てめえも楽しんでんじゃねえか。あー、やめだやめ!解散!」 その言葉に見守ってくれているらしいヤジ馬からはブーイングが上がったが俺は関係ないとばかりに家へと向けて歩き出した。 背後からは一応王族であるはずの男から言いようが無いほど悲しい匂いがしておりそれに笑いを堪えつつバタンと扉を閉めればまた賑やかな声が聞こえ出した。 それを窓からバレないように眺めながら漸く震えの治まった手を見て溜息を吐いた。 城から家に戻って数日が経った。 あの時ジイさんと話して俺が出した答えは、逃げない。ただそれだけだった。 それを聞いたジイさんはただ小さく「そうか」と呟くだけだった。それと、あの日を境にジイさんが家に戻って来る様になった。 因みにリドさんは意外にも快諾だったらしい。 どうやら俺を張り倒した事を相当気にしているらしく、罪滅ぼしというわけでは無いがそれもあって許してくれたらしい。 許さなかったらどうしてた?と聞くと「一生口を聞かない」と返して来たそうだ。実際に問いかけられて居たらしい。 「……ソロ、」 外ではまだ賑やかな声がする中で家の扉が控えめに開いて、そこから固い顔をした白い男が入ってきた。 だが扉が閉められる事はなく、距離も遠いままで声を掛けられる。 「…なんだよ」 「…いや、」 虎じゃないヒトのコイツにはどうしても体が勝手に萎縮する。その証拠にさっき治ったばかりの手の震えがまた戻って来ていた。 それに溜息を吐くとアイツは表情にこそ出さないものの、尻尾を力無く垂れさせて耳も伏せてしまっていた。 顔とその他のギャップに少しだけ気分が和らぎ、緩く笑って見せると片手を振った。 「…また明日な」 逃げない選択をした俺は、アイツとの対等な会話を目指すべく特訓を開始していた。

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