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06ー4

秋も深まり木々が赤く染まり出した頃、外に長くいる事が辛くなって来た。 「寒い」 「え、そう?」 「ん、寒いの嫌いなんだよ」 「あー、まあ寒がりなのもあるだろうけど、単純にソロ君痩せてるからなぁ。寒さに敏感なのかもね」 雲が流れるのが早い空を見ながらいつもより少し賑やかな時間を過ごしいると鼻がムズムズして来てすぐにくしゃみをした。 「ソロ君もしかして風邪引いてるんじゃない?」 「くしゃみしただけで風邪とか言うなよ」 今日はアイツはいない。代わり、と言うわけでは無いが今日はトレイルが家に来ていて部屋に入ればいいのだがなんとなく外に居たいと思いそのまま話したりなんだりしていた。 こうもほぼ毎日王族やその従者が来るってやっぱりコイツら暇なんじゃないかと目を細めていれば俺の思考がわかったのかトレイルは大袈裟に肩を竦めて首を振って見せた。 「言っとくけどボクもヴァイスもちょー忙しいからね?ヴァイスなんて次のパーティーの用意とか公務とかすっごい大変」 「じゃあなんで俺のとこ来てんだよ。強制してねえよ、俺」 「…ソロ君そういうとこ本当鈍いというか、なんというか…。まあヴァイスの一方通行だからしょうがないんだけど…」 「?」 急にボソボソと早口で喋り出したトレイルの言葉がうまく聞き取れず首を傾げていると眉を下げて笑う。 「んーや、なんでもないよ。でもヴァイスにとっての最優先はソロ君って事」 「…馬鹿なんじゃね?」 「え、そこは嘘でもときめこうよ!こう、キュン、みたいなさぁ?」 「あり得ねえ気持ち悪い」 「ひっどい」 どこぞの乙女の様に胸の前で両手を組み妙に高い声で身体をくねらせたトレイルの姿に吹き出すように笑いつつ軽口を叩けばそれにつられたのかトレイルも笑い出す。 笑えば体温も上がるのか少し感じていた肌寒さも感じなくなった時にトレイルが「あ、」と声を上げた。 「でも本当にちょっとこっちに来られなくなるかもしれないんだー。お祭の準備とかパーティーの準備とかとにかくすんごい忙しくて」 「祭…?」 「そう。虎の国だと冬の始めにお祭りをするんだよー。みんなで冬を乗り切ろうそして来年もこの時期に楽しく騒ごう!っていう結構大きなお祭り」 「…へえ」 ただでさえ賑やかな街が更に賑やかになるところを想像していると隣でトレイルが笑うのがわかった。 「楽しみでしょー?本当楽しいお祭りだからさ、みんなで行こうね」 「お前とアイツは無理だろ」 「…、ふふ、うん。確かにヴァイスは無理だけど、ボクはどうとでもなるしなんとかするー」 何故だか一層嬉しそうに笑い出したトレイルにまた首を傾げながら、それでも楽しみな事に変わりはなく俺も知らず知らずのうちに笑みを浮かべていた。

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