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06ー5
「ソロー、今日も王子様来ないのー?」
「トレイルはー?」
トレイルが暫く来れなくなるかもと言った日から幾日が経ったが、あれから本当に二人とも来ておらず嘘の様に穏やかで静かな日々を送っている。
俺としては以前に戻った、という感覚なのだが子供たちにとってはそうではないらしい。
イチなんかはあの虎野郎が大好きらしく早く会いたいと駄々をこね、ニイはニイでトレイルに大変良く懐いておりイチと違いあまり顔や仕草には出さないもののアイツと同じで尻尾や耳が元気なく垂れ下がっており寂しさを如実に表していた。
「パーティーとか祭りの準備で忙しくなるから暫く来れないって前も言ったろー。大体あんな来てた方がおかしいんだからな?」
「えーー!ソロは寂しくないのー?」
「これっぽっちも寂しくねえな。はいはい飯できたぞー!ジイさん、はそういえば今日は城か」
ジイさんは昔のことをあまり語りたがらないもののやってきた功績というのは今も評価されているらしく今でも城に引っ張りだこだったりする。
今回行われるパーティーにも強制参加らしいから、貴族というものは大変だとも思うが俺には関係ない。
ただジイさんが帰ってきた時にほっとできる様にとミシュリーに協力して貰って焼き菓子の作り方を教えて貰っているのは内緒だ。
ちなみにこの作戦には子供たちも関わっていたりする。
「…!!シチューだー!」
「シチュー!」
「ガチャガチャすんなー。ほら、ちゃんと座って待ってろ」
初めて会った時から数ヶ月経っただけでこの子供たちも大きくなった。
とは言ってもまだまだ子供だから俺の方が大きいけれど、ちゃんと栄養も愛情も貰って生きているからすぐにニイなんかは俺よりもしっかりした体になるんだろうなと思いながら野菜がたっぷり入ったシチューを木の器に入れてテーブルにもっていくと子供たちは待ってましたと言わんばかりに食べ始めた。
「イチ、ブロッコリー」
「ちゃ、ちゃんと食べるもん…!」
「ニイ、お前はにんじん残すなよ」
「……残さないし」
どれだけ大きくなっても苦手なものは苦手らしい、双子らしくおんなじ嫌な顔をしてスプーンにすくった野菜を口に頬張り咀嚼する姿は可愛らしくもあり面白くもあって無意識に頬が緩んでしまう。
そんな俺を見てやっぱり二人が同じ顔をして恨めしそうに俺を見るものだから今度こそ俺は声を出して笑ってしまうのだった。
どこからどう見ても平和そのもの。そんな生活を送って、ふらっと現れるであろうアイツらを待っていれば良い。
そんな気持ちで過ごしていたのに、それは可愛い黒猫のせいでとんでもない事になる。
「ねえ!イチもお城行きたい!パーティー行きたーーい!」
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