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06ー7

「んもう、失礼しちゃうわぁ。こんなにビューティでキューティでエレガンッな私が招待状持って来てあげたっていうのに」 「どっからどう見ても不審者だろ」 「んまーーっ!」 ゴリゴリに発達した腕の筋肉にそれを一切隠そうとしないパツパツの黒の不思議な形のノースリーブ、パッツパツのせいで見たくなくても確認できてしまう上半身の完成された筋肉と鼻が効かないほどに吹き掛けられている妙に甘ったるい香水、顔面の造作で言えば男前に当たるのだろうが唇は真っ赤に塗られていれ瞼はなんか金色でギラギラしていた。 日に焼けた肌と長い金色の髪を女物の髪飾りで結えているその姿は一言で言うならば派手。悪く言うならなんかゴチャついている。 そしてそんな奇怪な男と俺たちは何故か馬車に乗っていた。 突如訳のわからない奇声を発したコイツから逃げようとしたが何故か家の周りには見たことのある服を着た奴らが数人いて、逃げることも叶わずにそのまま子供たちと一緒に馬車に乗ることになってしまった。 逃げるためにどうしようかと必死に考えているとこの男まで同じ馬車に乗り込んできて、まあ冒頭に戻る訳だけど。 「…お前誰だよ」 「あらぁ、初対面のレディにお前だなんて随分お口が悪いのね」 「おねーさんはだーれ?」 「、イチっ」 「あらやっだ!この黒猫ちゃんきゃわいいわねぇえっ。私あなたみたいなきゃわいい子って大好きよ。キスしたいくらい」 一ミリの警戒心も抱かずむしろ興味津々と言った風に身を乗り出して不審者に近づこうとするイチを抱き締める。 ニイは警戒のあまり尻尾をずっとブラシの様に膨らませてイチの服を握っていた。 「…子供に触るな。お前ら城のヤツだろ。誰だ、なんの用があるんだよ」 不思議そうに俺を見てくるイチに首を振って警戒しろ、というのを伝えながら目線はずっとこちらを見ている男から離さない。 キツい香水のせいで鼻が鈍りこいつが今どんな感情なのかもわからず、馬車が揺れるたびに鳴る装飾具やニイからの怯えの音が大きすぎてそれも判断がつかない。子供たちを抱き締めたまま喉を唸らせる俺を値踏みするかの様に見る男の目はやはり不気味だった。 「言ったでしょう?招待状を持って来たのよ。今日開かれるパーティーのね?」 パーティーと聞いてイチの目が輝くのがわかり、それに男も気がついたのだろう。赤く塗られた唇で綺麗に笑って見せた。 「おめでとう、あなた達は幸運よ」 服の間から一つの封筒を取り出し、俺にそれを見る様に差し出して来た。 目線を逸らさないままそれを受け取り目線を走らせれば確かにそんな内容が書かれてあるが、信じられる筈もなく紙を握り潰そうとした時に男が口を開く。 「その封筒、まだ匂いが残ってる筈よ」 嗅いでみたら?と愉快そうに唇に弧を描いたまま告げるそいつに微かな苛立ちを覚えつつ言われた通り鼻を近づけて俺は目を丸くする。 「……、」 「わかってくれたみたいね。それじゃあ今からドレスアップよ!黒猫ちゃんをプリンセスにしてあげるわーーっ!」 「やったーー!」 腕の力が緩んだことで俺からするりと離れて男とキャッキャとはしゃぐイチの声をどこか遠くに聞きながら、俺は封筒を見る。 そんな俺を見てニイが心配そうにするが俺はそれに答えてやれるほどの冷静さをまだ取り戻していなかった。

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