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06ー11

悪意を持った言葉は嫌なほどに耳に残る。 自分の事なら鼻で笑って済ませてしまえるのに、どうしてこんなにも胸の中に重たいものが溜まっていくのだろう。 「…どうしてみんな王子様のこと悪く言うの?王子様いい人なのに、」 ポツン、と呟かれた言葉が耳に届きはっとして子供たちの方へと足を向ける。 そこには目に涙をいっぱいに溜めたイチがいて、ニイも悔しそうに服をきゅうっと握って俯いていた。今にも泣き出してしまいそうな子供たちを放っておくなんてことができる筈もなく不審に思われない様に注意しながら会場の端にまで移動してカーテンの影に隠れると床に膝をつく。 そうした途端二人して抱きついて来たため倒れない様に気を付けながら抱き締めた。 「…ねえソロ、なんでみんなあんなひどいこと言うの…?」 震える声で紡がれた言葉に俺も何て言えばいいか分からずにただ背中を宥める様に撫でるしか出来ない。 俺よりも耳がいいニイは悪意のある言葉が耐えられないのか俺の方に額を押し付けながら自分の耳を両手でぎゅうっと押さえていた。 「……、」 「ソロ、どうして?」 少し前までは楽しそうに揺れていた尻尾が力なく垂れてきっと初めて触れるであろう悪意に子供たちはただ悲しそうに眉を下げる。 泣きそうな顔で問いかけてくるイチを見つめながら、頭の中ではリドリウスに言葉がずっとぐるぐると回っていた。 悪魔だ死神だと呼ばれ実の親や兄弟からも疎まれてそれがなんの関係もない奴らにまで広がりそして孤立してしまった忌み嫌われた子供。 一度植え付けられた感情は消えない。限りなく薄まるだけで、その人の中に留まり続ける。それは受けた側は勿論、それを受けさせた側にも共通して言えること。 あの時リドさんが言った言葉が真実だとするのなら。 「…アイツは何もしてない。お前らが好きだと思ったヒトってなんか悪いことしたことあるのか?」 その問いかけに子供たちはふるふると首を横に振る。 それに頬が緩むのを感じながらぽんぽんと二人の頭を撫でた。 「じゃあそれを信じとけ」 うん、と頷く子供たちを見てにいっと歯が出る様に笑って見せればキョトンと瞬きをしていたがすぐに俺の真似をしてにいっと口角を上げた。 「折角可愛くて格好いい服着てんだから笑っとかねえと損だぞ。このパーティーが終わったら家でアイツらも呼んで楽しいことしよ。多分アイツもうちのほうが落ち着くと思う、」 視線を会場にやると煌びやかな世界の中で一際目を引く存在がある。 ヒトがあえて距離を取っているせいもあるだろう、アイツだけが浮かび上がる様な空間に胸が締め付けられる気がした。 それがどうしようもなく悲しく思えるのはどうしてだろうか、これは悲しいなんて感情なのかそれとも自分との住む世界の違いを今になって実感して気落ちししているのか今の俺にはわからなかった。 「…ニイ、大丈夫?」 すぐ側でイチの小さな声が聞こえて目線を戻した、その時だった。

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