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06ー17
明くる日の昼、俺は相変わらずベッドの住人と化していて至れり尽せりの生活を余儀なくされていた。
目が覚めたという事で医者にはあったがそれ以外のヒトは未だにコイツとしか会っておらずそれに少し寂しい気もしつつ、激怒されるんだろうなと思うと会うのはもう少し先でもいいかなだなんて思ってしまう。
俺が気を失ってから眠っていたのは一日だけ。まあ肩を撃たれただけだからそんなものかとつい声に出してしまった時の医者とアイツの顔は多分一生忘れない。
ただ綺麗に肩を貫通したらしくこのまま回復すれば後遺症もなく以前の生活に戻れるそうだ。それにほっと胸を撫で下ろして、医者がいなくなり二人になった部屋で俺は息を吐いて天井をぼんやりと眺める。
あのパーティーの日、俺は二発目の衝撃が来る前に目を閉じて、そこからの記憶がない。
だから聞いてみたんだ。
「あの後どうなったんだ?」
その問いかけにとんでもなく重たい沈黙が訪れる。
すん、と鼻を鳴らすと感じるのはやはり重たく暗い感情で、俺はあの日見たものを思い出す。
綺麗に笑う悪魔の様な女の人がいた。
唇に確かな弧を描いて、あの凶行を指示していた。
「……、母上、…王妃が拘束された。お前を撃った奴も」
最も、それを指示したのは兄上だが、と言葉を続けるソイツの目はどこか遠くを見つめていた。
その表情からは今どんな感情でいるのかは読み取ることは出来ず、匂いや音でもそれを推し量ることは出来なかった。
「…そっか」
他にどんな言葉でなんて言ったら良いかわからずに、俺はただそれしか言えなかった。
悲しめば良いのか、怒れば良いのか、それすらもわからない。
「……殺されかけるほど疎まれているとは思わなかった」
微かに開いた窓からは冷たい風が入って来て夏の頃よりも厚くなったカーテンを揺らす。
そのはためく音と、じんわりと染み込む様な声しか聞こえない空間に目を細めた。
「…どうすれば良いのかわからなくなるもんだな。こんな感覚はもう慣れたと思っていたのに、」
は、と乾いた笑いが耳に届いた。
諦めた様な、呆れた様な、その笑い方は間違いなくソイツ自身に向けられた物だった。
「…珍しくあの人からパーティーに出る様にと言われた。普段顔も合わせないどころか、俺の存在をなかった事にしているクセにな」
ギシリとベッドが僅かに軋んで沈む。
寝転んだまま目線を向けるとそこにはベッドに腰掛けたアイツがいて、手を伸ばせば触れられる距離なのになぜかそれが出来なかった。
「……本当に、俺は愚かだ」
両手で顔を覆いながら呟かれた言葉は微かに震えていた。
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