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07ー2

離れていくその指を握り込んだのはもうほとんど無意識だった。 「だ、から…っ!」 胸の内に巣食うのは、怒りか、それとも悲しみか。 「逃げんなっつってんだろ!」 気がついたら俺はそう叫んでいて、怪我のこととか一切忘れてソイツに馬乗りになっていた。 突然のことに理解が追いつかず目を丸くして俺を見上げるソイツの顔がはっとして焦った様な顔に変わる。その目線は俺の肩だったり顔だったりに向けられていて忙しい。 「ソロ、」 「お前今、俺を捨てようとしただろ」 「、何言って」 「なんで、なんであんな母親より先に俺を捨てようとしてんだよ…!」 撃ち抜かれた肩や腕は自分の意思では動かせずそれがとてつもなく腹立たしい、だから俺は無事な方の手でソイツの胸を叩いた。 その振動も体に響いて鈍く痛むが、頭の中がぐちゃぐちゃで正直なところ痛みなんてほとんど感じなかった。 「ソロ、落ち着け」 「うるせえ黙れクソバカ!」 再びソイツの体を叩くと俺は荒くなった呼吸を整えようと何度か深呼吸を繰り返す。 落ち着けば落ち着くほど痛みが強くなってきてそれが余計に思考を冷静にしていくから今ばかりは自分の性質が嫌で思わず舌打ちが漏れる。痛みの強さからしてきっと傷口が僅かに開いたのだろう、きっと服の下で巻かれた包帯は血で染まり出しているのだろうなと思えば余計に時間が無いことを悟って下にいるソイツを睨みつけた。 「…捨てようとなんてしてない」 「けど俺の手剥がしたじゃねえか」 「あれは、」 そう言って眉を寄せて口を引き結ぶソイツに俺はどうしようもなく苛立って、少し強めに胸元を叩いた。 「…俺は自分の意思でお前から逃げて戻ってきたんだよ。俺は俺がそうしたくて、こんな訳わかんねえ怪我までしたのに、漸く普通に話せる様になったのになんでお前からまた離そうとすんだよ!」 落ち着こうとしても話している間にまた感情は昂って言葉が荒くなってしまう。痛む体に動かない片腕、うまくいかない感情制限、何一つ思う様にならない自分が情けなくて息が震えた。 ぎゅっと唇を噛んで俯いていると下から溜息が聞こえ、それにまた腹が立ち声を上げようとした時は俺の体は温かさに包まれていた。 「わかった、わかったから泣くな」 「…泣いてねえ、馬鹿。バーカ」 「…ああ、すまなかった」 ぐす、と鼻を鳴らしてソイツの方に額を押し付けると体に回ったソイツの腕の力がほんの少し強まった。 包む様に広がる甘い匂いも、それはただ俺を落ち着かせようとしているもので、それで簡単に絆されてしまう自分に苦笑しつつ両腕を上げたと同時に部屋の扉が開いて俺は二重の意味で声を上げることとなる。

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