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07ー8

アルヴァロが王になった日からアイツが側にいる時間がめっきり減った。 今までは俺が目覚めたばかりだというのもあり相当無茶を言って側にいてくれたらしい。 「……暇だ」 けれどだだっ広い部屋の中する事もなくただ起きて食って寝るの生活が繰り返されるといい加減飽きる。 今この城が、というか国がどれだけ大変なのかは時折帰ってくるアイツや世話を焼いてくれるメイド達の話を聞いてなんとなく理解はしているが実感は無かった。この部屋にいると世界から隔絶されている様な気分になるが、怪我も満足に治っていない今勝手に出歩けば面倒なことになるというのが火を見るよりも明らかで俺は今日もベッドの住人と化すしかなかった。 片腕を支えにして上体を起こしてベッドから降りる。ぺたりと床に足をつけて歩き、窓の側に行って外の景色を眺めた。 城に車はほんのりと色づいていた葉の色が今ではもう全て赤く染まり、木の種類によってはもう葉が落ちているものすらあった。季節の移り変わりを目で感じながらふと窓に写った自分の姿に息を吐く。 見た目からすればもう以前の姿と変わらないが怪我をした方の肩は大げさなほどに包帯が巻いてある。 「…これじゃあまだ帰れねえなぁ」 せめて包帯が取れればと独言るが、こればかりはどうしようもないということを理解していた。 こんな包帯をしたまま帰ってしまえば家にいる子供たちが泣き叫んでしまうのが容易に想像できた。 そう思うだけで心が重くなり、気がつけばため息を吐いていた。 だがそれと同時にまだここにいる理由がある、と思ってしまう自分も居た。 そんな思考になる度に言い様のない感情が腹の底から湧いてきて気持ち悪さや苛立ちとは違う感覚が全身を回りどうしようもない気持ちになる。 「はぁ……」 「大きな溜息だね」 不意にかけられた声に大袈裟なほどに体を跳ねさせると肩に引きつる様な痛みが走り口から短い悲鳴が上がる。 それに声をかけた主は動揺した様に声を上げた。 「ああ、すまない驚かせるつもりはなかったんだ。ただノックをしても返事がないから心配になって」 振り返った先にいたのは大きな耳を申し訳なさそうに垂れさせ、そしておどおどとした様子で俺を見るリドさんだった。 「…うわ、すげえ久しぶりだ」 挨拶よりも先に出た言葉にリドさんは眉を下げて笑う。 どこか困った様に、そしてどうしたらいいかわからないという様な顔で俺を見るものだから不思議になって首を傾げてしまう。 「…リドさん?どうしたんですか、なんか、まあ色々あるか。今すげえ忙しいんじゃねえの?」 「いや、まあ、忙しいが」 どうにも歯切れが悪く、そして扉から体を半分入れたところから部屋に踏み込もうとしない様子に俺はますます首を傾げる。 「…リドさん?」 「……ああ、すまない。そうだな、このままでは困らせてしまうな」 俺の様子を見てふう、と深呼吸をしてからリドさんは覚悟を決めた様に部屋に足を踏み入れた。 そしてゆっくりと近づいて来たと思えば微妙な距離感で足を止め勢いよく頭を下げた。 「ええっ!?」 「ソロ君、あの時はすまなかった!」 窓ガラスがビリビリと震える様な声量で告げられた謝罪に俺は二重の意味で驚き、驚きすぎてとんでもなく間抜けヅラをしていたと思う。 そして口を開いた。 「……はい?」

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