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08ー1

「ソローーーーっ!!」 「うおおおっ!」 馬車が家の側に着き中から出た途端俺の身体は地面に押し倒された。 「ソロ、本当にソロ?もう痛くない?元気?」 「い、いじめられたり、してねえのかよっ、ずっと、ずっとあんなとこ居てっ」 ふわふわとした小さな雪が降る中押し倒された俺の背中が冷たくてしょうがないし何なら思い切り背中から地面にいったせいで肩がめちゃくちゃ痛かったりするが、抱き付くなり泣き出してしまった子供たちを見ると何も言えなくなった。 嬉しさと申し訳なさで複雑だが、俺のために泣いてくれているのがなんだか嬉しくて俺はそのまま二人をぎゅうっと抱きしめた。 「…心配かけてごめんな。もう大丈夫だから、ほら、今だってお前らのこと抱き締めてるだろ?」 最後にあった時よりも少し大きくなっている気がする。その事にちょっとした感動を覚えながら声を上げて泣く子供たちを抱き締めていれば耳のすぐ側で地面を踏む音が聞こえた。 「よ、トレイル」 「…よ、じゃないでしょー?ソロ君って怪我人って自覚あんの?はいはいイチちゃんニイ君、このままだとソロ君風邪ひいちゃうよー?」 「こんなんで引くわけ、はあっくしゅんっ!」 「!!」 頭上から呆れた様な声と共に顔を覗かせて苦笑するトレイルを見て口角を上げながら告げていればその途中でものの見事に寒さにやられてくしゃみをしてしまい、その途端耳と尻尾をピンと立てた二人が同時に俺の上から退いた。 「そ、ソロ風邪ひいたらまたお城戻っちゃう?」 未だにべそべそと泣きながら告げられた言葉に目を丸くした後に俺は身体を起こして手を伸ばす。 くしゃくしゃと頭を撫でながら、自分が思っていたよりもずっと寂しがらせて、悲しい思いをさせた事を知って胸が痛くなった。 「…風邪引いたくらいじゃ戻らねえよ。ほら、家入るぞ。ジイさん居る?」 二人がこくりと頷いたのを見てから俺はトレイルに視線を送る。それに肩を竦めて見せて家を指差し、その先を辿るとそこには玄関の前でいかにも心配ですというオーラを纏ったジイさんが居た。 「ソルフィ様もソロ君と同じでめちゃくちゃ寒がりなんだよ。はいはい、後は家の中でやらないと二人が風邪引いちゃうよ!」 はらはらと雪が降る。 吐く息は白く染まりとてつもなく寒い筈なのに、やっぱりどうしたって暖かいと感じてしまう。 トレイルの声に促されて漸く歩みを進める。 城からの土産はトレイルに持って貰って限界前まで行くとそこでまた足を止める。 「…ただいま、ジイさん」 「おかえり馬鹿息子」 軽い抱擁と共に震えた声で告げられた言葉に耐えきれずに噴き出すように笑ってしまった。ずるいずるいと可愛い事を言う子供たちと、やれやれと言う様に息を吐きながらも安心した風に笑うトレイル。 思い切りジイさんに抱き着いてから俺は家に入った。

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