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08ー2

「ソロー!朝だよーーー!!!」 「雪積もってる!遊ぼ!」 窓の外からは街の賑やかな音と、それと相反する程の静かな音が鳴っていた。 しんしんと雪が降り、窓硝子が時折尖った音を奏でる。部屋の中に居ても外と変わらないんじゃないかという様な気温に身体を縮こませてベッドに潜る。 そうすればいくらか温かくこのまま二度寝でもしようかと思ったが、物事はそう楽な方には運ばない。 ドタドタと今日も元気いっぱいに階段を駆け上がり扉を開け放った子供たちの声にのそりと顔だけ覗かせるも途端に感じる冷気に俺は簡単に折れる。 「無理。寒過ぎてソロさんは動けません」 「動いたらあったかくなるよ?」 「そう言う問題じゃない」 冬になって頻繁に行うやりとりだが子供にとって寒さよりも雪という遊び道具の方が重要らしく今日も今日とても子供たちは顔を見合わせて同じ角度で首を傾げる。 その仕草にどうしようもなく可愛いと思ってしまう辺り、今日もこの可愛さに負けるのだ。 「こらお前たち。今日の勉強が終わるまで遊ぶのはダメだと言ったはずだが?」 けれど今日はそうもいかなかったらしい、音もなく部屋に入ったジイさんが腕組みをしながら俺の布団を引っぺがそうとしている子供たちを見下ろして低い声で告げる。 びくんと肩を跳ねさせて後ろを振り向いたのはニイで、イチはちぇー、と言いながら俺の布団を掴む手を離した。 「…むう、ちょっとくらい遊んだっていいでしょ」 いかにも拗ねてます、といった風に唇を尖らせて小さな声でぼそりと溢すイチにジイさんは首を振る。 ニイはもう学習しているのか何も言わず気の抜けた声ではーいと返事をするだけだった。 「ソロ、お前もだ。さっさと起きて顔を洗って来い」 「……はーい」 心底ベッドから出たくないが子供たちの手前下手な態度は取れず渋々起き上がり床に足を着ける。 爪先から一気に冷気が背筋にまで駆け上がり尻尾と耳が立つ。あまりの寒さに歯を鳴らし自分の身体を抱き締めながら立ち上がった俺を見てジイさんが呆れた様に息を吐いた。 「…早く支度をしなさい。お前たちは勉強だ、さぼらない様に」 元々城でヴァイスの教育係をしていたり、その豊富な知識を買われて教鞭を取っていた事もあるらしいジイさんからの言葉はどこか迫力があって思わず返事をしてしまう。 どこかしょんぼりとしてしまった子供達の頭を撫でてゆっくりと歩き出そうとした時、先に部屋を出ようとしていたジイさんの足が止まり不意に振り返る。 「?」 それに3人揃って首を傾げているとジイさんはおかしそうに笑った後一つ咳払いをしてキリッとした表情を作った。 「トレイルからの伝言だ。明日、ヴァイス様と一緒に行くよ。衣装と美味しいもの持っていくからいい子で過ごす様に。以上だ」 なんて事ない様に告げて今度こそ部屋を出て階段を降りるジイさんの後ろ姿を見送った後、子供たちが顔を見合わせた。 「やったーーーーー!!」 「勉強終わらせて飾り付けしないと!」 「ミシュリーのとこにも行かなくちゃだよーっ!」 嬉しそうな子供たちの声が家中に響き俺も寒さなんか忘れて笑ってしまう。 どうやら今日は忙しくなりそうだった。

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