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08ー3
ジイさんがリドさんの家から持ってきたというやけに光沢があってお金掛かってます、という風な布を遠慮なく掴んで壁に掛けていく。
何度も本当にいいのか、と確認したがジイさんはその度に頷くだけだったので諦めたという経緯もある。
「…ほお、こうやって布を掛けるだけで随分と違うな」
「まあ使ってる物が物だからな…」
白に少しクリーム色が混ざったような、そんな柔らかい色合いの布で要所要所を飾り付ければ木の色合いしかなかった部屋が一気に明るく華やかになった。
それに感心した様に息を吐いたジイさんは椅子に座って何やらリースを作っているらしい。
「…ジイさん普段あんな不器用なのに何でそれだけうまくできんの?」
「奉仕活動をしていた時子供らと積み上がる程作ったからな。この時期の装飾品だけは職人に引けを取らんという自負がある」
針葉樹の葉と赤い実、ドライフラワーに松ぼっくり、金色に装飾された葉っぱやこれもリドさんの家から持ってきたであろう繊細なレースの数々。
それらを湾曲した蔦や細枝に器用に編み込んで飾りを作る姿は最早板に付いていた。
「…すげえ」
「ソロもやってみると良い。やってみると存外面白いぞ」
「飾り付けが終わったらな。子供たちが帰って来るまでに終わらせねえと」
雪で遊ぶとはしゃいでいた子供たちはあれから頑張って勉強を終わらせて今はミシュリーの店に明日のパーティーで食べるお菓子を買いに行っている。
あれからずっとはしゃぎ続けていた2人を思い出して肩を揺らしながら笑えば引きつる様な痛みが走り身体を強張らせる。
「まだ痛むか?」
「時々」
完全に傷は塞がり以前と同じように動くがそれでも時折痛みが走る。声には出さないがそういった素振りを見せるとやはり心配をかけてしまうようで、俺は苦笑した。
「大丈夫だって。お城のお医者さんが治ったって言ってんだからさ」
そう言って再び布を持って椅子の上に立つ。
カーテンの代わりになる様にしようと腕を動かしていた時、視界に小さな影が二つ見えた。
それが何か考えるよりも先にわかってしまい俺の頰はだらしなく緩んでしまう。
「…あいつらはしゃいでんなぁ」
「ずっと楽しみにしていたからな、お前や殿下と遊べるのを」
「…そっか」
両手いっぱいのお菓子を持ってゆっくりと歩きながら帰ってくる二人の表情は見えないが、それでも雰囲気から嬉しそうなのはよくわかった。
「…アイツ、明日離して貰えないだろうな」
ぽそりと呟いた言葉はしっかり届いたらしくジイさんが頷くのがわかった。
それに笑いながら窓の装飾を進めようとすればニイが俺に気がついてイチに声を掛ける。
尻尾をご機嫌に揺らしていたイチがニイの言葉を聞いて目を凝らすのがなんとなくわかり手を振れば2人して手を振れない代わりに尻尾を揺らして見せた。
「あー、可愛いなぁ、もう」
帰って来たら構い倒そう、そう思いながら俺は装飾を再開した。
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