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10ー7※

酷く濡れた音が部屋に響く。 乱れた呼吸音に小動物の様なか細く切ない声、ベッドの軋む音、全てが混ざり合っていた。 「ぁ、あ…っ、」 その中で蕩け切った声がやけに甘く響いて、ただでさえギリギリのところで保っている理性が全て焼き切れそうになる。 どこまでも甘く、そして体の奥底から本能的な衝動を呼び起こそうとする匂いに歯を食いしばって耐えていた。折れそうな程に細い腰を抱いて中を貫く。 抜き差しする度に上がる甘い声に喉からは獣の様な唸りが鳴る。 「かんで、もう噛めよぉ…っ!早く、ンァ…っ!」 いつもはピンと尖った耳を力なく垂れさせ林檎の様に頬を赤く染めた番が泣き声とも取れるか細くて震えた声で何度目かわからない願いを口にする。それを聞くたびにアヴィスはどうしようもない衝動に駆られる。 「ちゃんと噛んでやる、けど、今はダメだ」 律動を続けながら囁いた声のなんと情けないことか。快感と焦燥で掠れ上擦った声、真冬だと言うのに一糸纏わぬ己の体から火が出るのではないかと思う程に熱が篭り、流れた汗が顎を伝ってソロの白い体に落ちていく。 ソロの白い体は今は仄かに色づき、しっとりと汗ばんでいた。 記憶にあるよりも少しだけ肉付きが良くなった体だが力を入れれば簡単に折れてしまいそうな程に儚いことには変わりない。 「なんで、おれ、噛んで良いって言ってるのにぃっ」 ぽろぽろと涙を流しながら訴えらえる言葉にまた己の質量が増すのがわかりヴァイスは思わず舌打ちして誘う様に濡れている赤い唇に食いついた。 「んぅ…っ、は、ヴァイス…っ、ん、ヴァイス、」 無我夢中でヴァイスの背中に両腕を回して口付けを強請る姿に堪らなく愛おしくなって一層奥を抉るように貫いた。快感に体を震わせてもう何度目かわからない絶頂に達した自らの番を見てヴァイスは目を細める。 「ソロ、大丈夫か…?」 大きく呼吸を乱して余韻に全身を震わせる細い体を抱き締めて問い掛ける。 全身、特に首筋から香る匂いに眩暈がしそうだと、そう思いながら頬を撫でればとろりと、蜜をのように甘く瞳を蕩けさせた番がこちらを向く。 「、もっと、欲しい」 鼻先が擦り合わされ何よりも愛しい存在からされた可愛らしく、そして悪魔的な誘いに呼吸が止まりそうになる。 今すぐに頸を噛みたい衝動を抑えながら、ヴァイスはその願いに応えるように口付けを送った。

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