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10ー8※

ふと目が覚めた時俺の身体は温かい何かに包まれていた。 気が狂いそうな熱も感じない事にほっとしつつ、久しぶりに感じる気怠さに少し恥ずかしさを覚えながら顔を上げる。 「起きたか」 「、お、はようございます…」 すぐ真上から降ってきた声に大げさに体が跳ねる。だがその反応が拒絶からでは無いことぐらいわかるのか頭上でヴァイスが喉を鳴らして笑う。 記憶はあまり無いが、確実にやることはやった自覚はある。 互いに服なんて着ていないし、部屋には自分たちの匂いが立ち込めていて明らかすぎる甘い空気に顔に熱集中するのが分かった。 「…今日は逃げないな」 そんな顔を見られたくなくて思わず胸元に顔を埋めればぽつ、と小さな声が聞こえる。 なんのことだと一瞬疑問に思うがヴァイスが何を指して言っている言葉なのかすぐに理解できてああ、と声を上げた。 「…あの頃とは、こう、気持ちが違うし」 「そうか」 匂いや音を意識して聞かなくてもわかるほど嬉しそうに返事をするからさらに恥ずかしさが増す。けれど同時に嬉しくもあった。 ふわりふわりと互いの香りが混ざり合って溶けるように広がっていく。それに包まれているだけでとんでもなく幸せで満たされる。 これも番になったからか、なんて思いながら頸に手を伸ばしてそこに指で触れて俺は目を丸くした。 「…ぇ、」 どれだけ触れても何もないそこに一気に体が芯から冷えて行く。 「な、なんで、なんでまだ噛んで、」 あれだけ感じていた幸福感が一気に消え失せて代わりに言い様のない不安感が体を襲う。自分でもあり得ないくらい動揺しているのがわかり、声どころか全身が震え出した時グッと顎を掴まれて顔を上げさせられた。 そこにいたのはどこか憮然とした様子のヴァイスで、形のいい眉がクッと眉間に寄っていた。 その表情にたった今まで泣きそうだったのが急に苛つきに変わる。 「、なんでそんな顔されないといけねえんだよ!お前と、ようやく番になれたって思ったのに…っ」 「お前、俺がどれだけ耐えたと思ってやがる」 地を這うような低音が聞こえたとほぼ同時に視界が変わる。 「…正気じゃねえ状態のお前を噛むなんて出来るか、馬鹿」 月の光を集めたような銀髪がさらりと落ちる中告げられた言葉は荒い口調とは裏腹にとても優しいもので目を丸くする。 ただ何を言っていいかわからずに固まる俺を見て、ヴァイスはいい顔で笑った。 「この期に及んで俺からの愛を疑うなんてなぁ、まだまだ行動が足りないらしい」 「いや、あの、」 「まだ発情期(ヒート)は治まってねえからな、時間はある」 「ヴァイス…?」 片側の口角を上げた獰猛とも取れる笑みを見て心臓がざわりと騒ぎ出す。 溶けるように広がる匂いに体が熱を持って行く、その感覚は以前なら嫌で嫌で仕方がなかったのに今ではもう蕩けそうな程の甘さと熱を持って俺の体を撫でて行った。 「昨日手加減した分覚悟しとけよ、殿」 囁かれた言葉に腹の奥が疼いたのが分かった。 唇が合わさり、これ以上ないほど抱き締め合いながら二人して目を閉じないで見つめ合う。互いが欲しいと光る目を見て、どちらともなく笑い合った。

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