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10ー9※

初めてヴァイスと会った日の事はよく覚えている、というかあんな鮮烈とも言える印象をどう忘れたらいいのか俺にはわからない。 けれどそこから先は本当に最悪で、そのことはあんまり覚えていない。これはどちらかと言えば覚えていたくないと言ったほうが正しいかもしれない。それほどまでにそれ以降の記憶は俺の中で嫌な部類に入るものだった。 体を繋げる事だって痛みしかないと思っていた。 匂いのせいで体が狂わされるだけで、終わった後に残るのは言い様のない痛みと虚無感。あんなもの二度とするものかと、そう思っていた。 そう思っていたのに。 「も、嫌だ…っ!や、やだって、嫌だぁっ」 「…っ、嫌じゃねえ、ほらこっち向け」 うつ伏せにさせられて腰だけを高く突き上げた格好で後ろから容赦無く貫かれる。 本当に獣のような行為に口からは信じられないほど甘ったるい声しか出ないし、体だって溶けそうなくらいに気持ちよかった。自分の体なのに自分の体じゃないような、そんな感覚が恥ずかしくて枕に顔を埋めていれば後ろにいたヴァイスが体を俺の方に倒す。 そのせいでもう既にいっぱいに受け入れているはずのヴァイスの熱が更に奥へと入り込んで背が弓形に反る。 「ひぅ…っ!ぁ、奥、おくもう無理…っ」 「ソロ」 「っ、ん、…っは、ヴァイス、」 後ろから顎を持たれて振り向かされたと思えばすぐに唇が重なった。 耳を塞ぎたくなるような淫靡な水音が鳴って耳が自然と垂れるがそれよりも興奮が昂まってしょうがないのもまた事実だった。 唇が離れてヴァイスの舌が俺の体を這う。 ザラついた舌が傷をなめた。あの日、撃ち抜かれたそこはもう傷こそ塞がっているもののその痕は決して綺麗と言えるものではない。だけどヴァイスはそこに慈しむように口付けるから、俺はなんだかむず痒くて笑ってしまった。 それにヴァイスも笑う気配を感じていれば今度は首筋を舐められ、そして頸へと続く。 「、…」 嫌悪感とは全く違う緊張が一瞬俺の体を走ったけれど、それはすぐに消えていった。 だって、俺の番の方が俺なんかよりもずっと不安そうな音をさせたから。 「ヴァイス」 呼んだ声は掠れていた。 「ああ」 それに答えた声も、同じくらいに掠れていた。 「…愛してる」 「、へへ、俺も」 ぶつん、と皮膚に牙が食い込む音がした。 「ーーッ!!ぁ"、っは…!」 襲ってきたのは痛みというよりも熱。 感じたのは、ただ嬉しいという思いと、ほんの少しの恐怖だ。 一生を一緒に生きる、出来るだろうか、そんな事。 「…ソロ、」 視界に写るのは綺麗な紫から雫を溢すヴァイスの姿で、その顔が、その声が、俺を好きだと言ってくれていた。 「……なくなよ、ばーか」 痛みも忘れて俺は笑う。 このヒトを幸せにしたい。 そう思えたから、きっと大丈夫だ。

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