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第1話・引っ込み思案なぼくの必需品は携帯望遠鏡。(4)

 というか、ドキドキしすぎて話すことなんてできない。  なんたって三年越しの恋だもん。  ぼくはこっそり三浦先輩を見るだけだ。  きっと三浦先輩は隣に住むぼくが、同じ高校に通っている後輩だなんてことも知らないだろう。  だからぼくが三浦先輩を好きになったきっかけだって覚えていないはずだ。  一目惚れのきっかけは、ぼくが中学での入学式の日だった。  広い中学で体育館が分からなくて迷ってしまったあの時。たまたまそこに居合わせて、声をかけてくれたのが三浦先輩だった。  どうしようかとドギマギしていたぼくを、頭を撫でて(なだ)めてくれたっけ……。  二重の目を細めて笑ってくれたその表情が降り注ぐ陽の光に照らされて、とても綺麗だった。  三浦先輩の表情や手のぬくもりは時間が経った今でも鮮明に残っている。  その先輩がお隣さんだとぼくが知ったのは、それから少し経ってから。  お父さんと離婚したばかりの引っ越しだったから、全然気付けなかったんだ。

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