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第2話・ストーキング、できなくなっちゃった。(1)

「せ、せんぱ、い……なんで……」  すし詰め状態の満員電車の中。  ぼくはお尻の穴に挿れられた指からなんとか逃れたくて振り向けば――。  そこには、背の高い、すらりとした体型の三浦先輩がいた。  (たず)ねたぼくの声が震えている。  自分でも緊張しているのがとてもよく分かった。 「君が俺のストーカーをしているの、ずっと知ってた」 「っつ!!」  それって、それって……。  先輩のたったひと言で、ぼくの全身から血の気が引いていく。 「初めはただの思い過ごしかと思ったんだけど、常に視線を感じるし、視線を追えば、君が必ずいて、しかも学校だけじゃなくて家でも視線を感じたから、家のお隣が君だと気がついたんだ」  もしかして……。  電車の中で痴漢していたのは、ぼくへの嫌がらせ……。  ぼくへの当てつけ……だったんだ。  ああ、先輩はぼくが思っていたよりもずっと、気が付かれていた。 「……っつ!!」  苦しい。  悲しい。

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