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第2話・ストーキング、できなくなっちゃった。(2)

 ストーキングが先輩に知られたことが――。  そのせいで先輩を苦しめてしまっていたことが――。  自分という存在がとても(みじ)めだ。 「真壁(まかべ)くん。もう、こんなこと、やめよう?」  そう言った先輩の声は、やっぱり優しくて――それが余計に悲しい。 「ごめっ、なさっ……」  ぼくが痴漢されるのをイヤって思ってたのと同じように、先輩もぼくのストーキングがイヤって思っていたんだ。  今さらだけど先輩の感情を知って、愕然(がくぜん)としてしまう。  大好きな人を困らせてしまっていた。  先輩を見られる時だけが楽しくて、嬉しくて――。  ぼくってば先輩のことを考えないで自分ばっかりだったんだ。  その事実がぼくを苦しめる。 「ごめんなさいっ!!」  謝ったその時、ちょうどドアが開いたから、人混みに紛れて先輩から逃げた。  ……知られた。  先輩に気持ち悪いって思われた。

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