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第3話・それでも大好きなあの人。(8)
ぼくの目の前には、ぼくが今助けてほしいと思っていた、大好きな三浦先輩が立っていた。
大学生で年上だと思うのに、三浦先輩は男の人の腕を後ろに引っ張り、拘束している。
どうして?
先輩はどうしてココにいるの?
「なんだ、お前はっ!?」
男の人がそう言った時には、もうぼくの近くにはいなくて、地面に尻もちをついて、こちら側を見上げていた。
そしてぼくは今、先輩の腕の中にいる。
「俺? この子の恋人。だからさっさとどっかに行ってくれない?」
えっ?
男の人の問いに平然と答える先輩。
だけど先輩は今、なんて言ったの?
『恋人』
その言葉を聞いたぼくは、耳を疑った。
――ああ、でも先輩はぼくを助けるために嘘をついたのかも知れない。
相手が誰であれ、こうして本心からでもない言葉を告げる先輩はとても優しい。
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