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第4話・追って追われて恋模様。(1)

「翔夢くんの家に行っていい? ふたりきりで話したいんだ」  コクン。  もう逃げられないと観念したぼくは、ゆっくりうなずいた。 『ふたりきり』  たしかに先輩はそう言った。  だけどどうして先輩はぼくの家に誰もいないって知っているんだろう?  もちろん、ぼくは先輩と話した事なんてないから、当然お母さんが看護師だっていうことも知らないのに……。 「どうしてだと思う?」  不思議に思って首を傾げると、まるで先輩は、ぼくが疑問に思っていることを知っているかのように、逆に(たず)ねてきた。 「中学二年の半ばくらいかな。俺は君の視線に気が付いたんだ」   家の前に着いたぼくは、先輩の腕から抜け出ると鍵を開けた。  先輩はぼくが自分の部屋に案内したあと、静かにそう言った。  そんな昔から知られていたの?  それってそれって、長い間とっても不快な思いをさせてたっていうことだよね。

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