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第4話・追って追われて恋模様。(2)

「っつ、ご、ごめんなさい」  ……はじめは、ストーキングなんてするつもりはなかったんだ。  先輩とはちょっと廊下ですれ違ったそれだけでとても嬉しかった。  だけど家に帰ってもお母さんはお仕事で夜はひとりきり……。  お父さんはお母さんと離婚してから電話ひとつもくれなくて――。  学校にいる時も、どこにいても、とても寂しくて……。  心細くて……。  そういう気持ちを紛らわすために、先輩への追っかけが少しずつエスカレートしていったんだ。  私生活を望遠鏡で覗くなんて、いけないことだ。  分かっているのに、自分のやましい心を止められなくて……。  いざ、先輩と向き合うと罪悪感がぼくを襲う。  ぼくは先輩から顔を()らし、ズボンの生地をギュッと掴んだ。  きっと、怒られる。  怒ったところなんてこれまで見たことがないくらいとても優しい人だから余計に怖い。

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