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えぴろーぐ。(1)

 次の日から、先輩はぼくと一緒に登校している。  前と違って、もうすし詰めの電車も苦手じゃなくなった。  それどころか、満員電車も前よりずっと好きになった。  先輩は人が多いからとぼくを抱きしめてくれる。  もう、痴漢みたいなこともされない。  ……たまに。  手持ち無沙汰になるのか、少しだけお尻を撫でられたりもするけれど……。  でも、大好きな先輩なら、イヤじゃない。  それからぼくはまた、望遠鏡を手に取った。  う~ん、とても幸せだ。  ――そして今は、お昼休憩中。  グラウンドでバスケットボールをしている先輩の姿が見えた。  レンズ越しで彼を発見すると、先輩はぼくに気がついたみたい。  視線が重なった。  すると先輩は自分の唇に人差し指を当てた。 「?」  なんだろう?  首を傾げ、レンズ越しから先輩を見つめる。  先輩はにっこり笑って、薄い唇を動かす。

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