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番外編2・電話して抱かれて恋模様。(1)

 夜は大好きな三浦先輩と過ごしていた日中が嘘のように静かだ。  お母さんは看護師で、今日も夜勤だから余計に寂しいし心細い。  それはまるで、ぼくははじめから、ひとりぼっちだと言われているように思える……。 「……けんと……」  けっして本人の前では言えない大好きな人の名前。  スマートフォンの画面上に表示されている電話番号を見ながらそっと呟いてみる。  先輩はもう寝たかな。 「会いたいな~」  先輩とお付き合いしている今は良い。  でも今だけだったら?  明日には違う人が好きだからって言われちゃったら?  いつかはぼくとお母さんを捨てたお父さんみたいに、どこか遠くへ行ってしまうんじゃないかって、そう思ってしまう。  だってぼくは何の取り柄もない奴なんだ。  どう考えたって学校の誰からも人気がある先輩とずっとこのままお付き合いできるなんて思えない。  捨てられるのは目に見えている。  いつかはさようならをされるのなら、今だけでもいい。

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