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第6話
ミカモトは容赦なく左手の薬指の爪にも刃先を挿した。柄を徐々に倒していく。虚ろな目は恨みを籠めるだけの気力もないらしく、恍惚さえ含んでミカモトを追っていた。小指の爪床は赤くなり、わずかな出血に留まっていたが薬指からは徐々に爪が肉から剥がれていく。別の感覚を与えるため布越しに厚い胸板を撫でた。衰えを見せていた下腹部の熱芯が跳ね、魚の目ほどの鉄球が先孔に引っ掛かりながら迫り上がる。大きく露出したしなやかな脚が苛立つように震えた。各所の行き過ぎた感覚に彼は惑乱し、唾液と唇の血を顎から溢し、汗も玉となってそこに合流した。
「ヲ…ミっ、」
すぐ傍の抑え込まれた喘ぎに掻き消えることもなくレグナの声がした。ミカモトの爪を剥がそうとするナイフに迷いが生じた。
「かき…ざき。そいつの、名前…」
俯せになりながら首だけミカモトのほうを見て彼もまた激しい汗に肌を光らせていた。一気に磔台の獲物の肉体から力が抜けていった。
「その他は…っぁっく、んっ!」
ミモリの乱暴な抽送によってレグナは高く鳴いた。
「妬けるのぉ、妬けるの、妬けるのぉ!え?どうして黙っておった?まさかその美丈夫にも惚れたのではあるまいな?それとも御神本に相手をして欲しかったのか?」
レグナは手枷で纏められた腕を上げ腋を晒した。ミモリはその滑らかな腋窩 に美味いものでもあるかのように舐めた。
「あ…っあ、っあ、」
「御神本、蘭紅を抱け。今日はご苦労だったからのぉ。たまにはあのおんぼろメゾンではなく広いベッドで交合うのも悪くなかろう?ワシゃその賓客をもてなさねばならん。なんと言ったかね?梨崎?ええ、瓜崎?」
ミモリは首輪と鞭を持ってカキザキというらしい青年に近付いた。ミカモトは渡された首輪をすばやく嵌めた。ミモリは顎でベッドを差す。ミカモトは首を振った。
「早よぅせい、ワシゃ気が長くないんじゃ。蘭紅をぽまえの極太魔羅で絶頂 させよと言っておろう!生憎ワシゃ1人なんでの。ぽまえの極太魔羅を切り取ってワシに移植してもいいんだぞぃ?」
ミモリは磔台から青年を外し、首輪を引っ張った。彼はもう歩けないようで磔台の下に崩れる。咄嗟にミモリを庇うように前に出る。
「ぽまえは早よぅ、蘭紅の相手をしやれ。思う存分、陰茎 絶頂 するがよい。ああ、爪もこんなんにして。人権団体に訴えられたら面倒じゃ。人権団体に!人権団体に!人権団体なんぞに!ぽまい、まさか人権団体ではあるまいな?」
巨大な芋虫のような指が汗ばんだ美しい顔をなぞった。青年はびくりと震えて声を漏らす。
「声も肌も悪くない」
ミモリは独言ち、傍に居るミカモトを睨んでレグナの相手をするよう怒鳴った。しかし何か思い付いたように雇主は一瞬停止し間の抜けた顔をした。
「蘭紅はぽまいのお気に入りだったな。ぽまいが抱くといい」
首輪から伸びる鎖を引っ張り、それは躾のなっていない大型犬の散歩風景を彷彿させた。青年は鞭で叩かれ身体を引き摺るようにベッドまで歩いた。ベッドに倒され、ミモリはニットワンピースの裾を捲った。
「なかなかよい魔羅じゃ。色も形もいい。これで蘭紅をヒィヒィ言わせたってわけかい。ワシのようにシリコンを入れるか?え?じゃがこの形を崩すのは気が引けるのぉ…」
小刻みな鉄球の輪郭が浮かび上がる一帯を浮腫んだような指が撫で上げる。見事な雄棒はそこだけ個別の生き物のように大きく揺れた。
「…っく…ッ」
ミモリは満足そうに笑い、一気にプラグを抜いてしまった。堰き止められていた栓を失い青年のグロテスクさと美しさを併せ持った秘茎は波打ちながら精を放つ。
「ぁあ…っ」
「おお、濃い。良いぞ、良いぞ、良いぞ。ぽまいには人権があるからのぉ…せめて乳房 でもてなしてやるぞぃ」
ミカモトはその間レグナの傍に寄って彼を抱き締めていた。まだ催淫剤は抜けないようで粘りつくような甘い花の香りは消えなかった。レグナの吐息は彼女のドレスを突き抜けその肌を炙り、何かを求めるように忙しなく強靭ながらも華奢な身体を撫でたり引っ掻いたりした。そのすぐ横にいるミモリは前掛け状のニットワンピースを布を中心に寄せ左右の胸筋を露出させていた。つんと上を向いた小さな実を突いたり捏ねたりして甚振られ、青年は性感に合わせシーツを掻き鳴らし悶えた。
「ああ、つい楽しくて忘れっておったわぃ。ほれ、交合え」
ミモリは首輪を引いて青年を起こし、ミカモトの腕の中にいるレグナへ手招きする。しかし彼はミカモトのドレスを摘んだり握ったりするばかりで離れようとしなかった。
「ヲミ……っ、ヲミ…」
上気した頬や艶めいて潤む眼球は肉欲にまみれていたがどうにか理性を手放さずにいるらしかった。ミカモトは彼を覗き込む。鉄球に繋がれ開いた膝が震える。シーツには多量の精が撒き散らされそろそろ透明に変色している頃だった。レグナの晒された腹にも白濁が散り重量に服従していた。
「なんじゃ、なんじゃ。客人に対して失礼じゃぞ…すまんのぉ、躾が行き届いてないみたいじゃ…ワシと遊ぼうかの。ぽまいの乳房はワシが育ててやろう」
器用な作業などこなせなさそうな太い指は青年の小さな突起を摘んで擂り潰す。彼は身をのたうたせ腰を突き上げた。
「…っぁ、は、ァ……」
「たまには乳房を責めるというのも悪くないものだのぉ?」
彼の凝った肉粒が引っ張られ、虚空へ抽送する下肢が弛緩した。断続的に粘液が噴いた。レグナはそれを食い入るように見つめさらに息を荒くする。ミカモトは苦しそうに咽せいでいる器官に手を伸ばした。
「あ……ヲミ…」
催淫剤からの解放のためだけに扱いていく。濃い青のレースに覆われた腕の中でレグナは肩は強張っていた。耳元で名を呼ぶと甘い吐息に変わる。
「変だ…オレ。ヲミ……っ触りたい…」
鎖に自由を奪われた手がレースの袖を揉んだ。しっとりした熱い指に焼かれるようだった。手淫が疎かになってしまう。レグナは唇を甘く噛み、彼女の細く長い指に陰筒を擦り付ける。
「あ…んぁ……イくっ、!」
飛沫が指の間から抜けていった。レグナの迸りが手に粘りながら落ちていく。亡き恋人と同じ声はミカモトの耳の中で何度も繰り返される。目の前にはまだ執拗に胸の実を嬲られ上り詰める襲撃者の痴態があった。ミモリを乳を飲むように貪り、ニットワンピースから伸びる長い脚が戦慄く。
艶宴は主催者が終わりの挨拶に赴くまで長いこと続いた。ベッドの上には首輪を繋がれた襲撃者が転がり、ミカモトの腕の中ではレグナが堕ちていた。催淫剤の効果は欲求の解消と内臓による分解により切れたらしかった。今はただ寝息が聞こえ、ミカモトはシーツに投げ出された爪の無い指の手当てをしようと身動 いだ。しかしレグナは深く眠り彼女のドレスを離さなかった。ドアがノックされミカモトは入室を許可した。淡いパープルのドレスを着た麗人が現れる。ドモンと言い合っていた女だった。彼女はベッドまでやって来てその堕落した有様を無遠慮に見回した。
「ケンゾお義父 様、いらっしゃる?」
彼女は証券インクを流したような髪を梳きながら訊ねた。その目はミカモトよりもベッドに転がっているニットワンピースの青年を注意深く眺めていた。ミカモトは不在と居場所を告げた。女はドモンには会いたくないようなことを言って不参加を謝っていたことを伝言として頼んだ。ミカモトと話している間も彼女はあられもない姿で寝そべる謎の青年を気にした。ミカモトもつられてスモーキーブルーのニット生地が掛けられただけのような服装の青年を見てしまう。しかし何か気になるようなところはなかった。
「そういうことですから、よろしく頼みましたわ」
美しい女は気拙 げな、ばつの悪そうな調子で念を押した。ミカモトは頷いた。淡いパープルのドレスの裾を翻しながら小気味良いヒールの音が貴賓室の外へ消えた。そしてミカモトは自分が裸足であることに気付いた。素足を眺めているうちに腕の中のレグナのではない物音が聞こえた。
「姉さん…?」
互いに目が合い静止する。ハシバミ色の目とチョコレートフォンダンを思わせる魅惑的な声を真正面から受ける。彼はすぐさま顔を背けた。そして頭を抱えた。ミカモトはレグナを慎重にベッドへ横たえ、冷たい水を用意した。受け取る気配はなく近くの平坦な場所に置き距離を取ってベッドへ座った。
「お前が、御神本か…」
喉は痛々しいまでに嗄れていた。途中から声が伴わなくなっていた。自棄を起こしたように青年は冷水を呷り、もう一度問い直した。ミカモトは頷く。シーツに埋まった左手の小指は爪を無くし腫れている。
「御神本久輪 が待ってる」
ミカモトは首を傾げた。青年もまた怪訝な表情をする。
「御神本久輪…お前の兄だ」
彼女はハシバミ色をぼんやりと見つめた。鼓膜を溶かす甘い声は堅く低く、冗談には聞こえなかった。詐欺師かも知れなかった。ミカモトは首を振った。まるで覚えがない。詐欺師でなければ人違いか、気違いだ。
「脱け出さないか。そいつも連れて」
彼はレグナを顎で示した。青年に倣ってミカモトもレグナを一瞥してから首を振った。
「戸籍ナンバーがそんなに大切なら、そいつにもある。そいつは兄と違う、戸籍ナンバーのある人間だ。お前のボスがいうところの、人権がある」
ミカモトは蝶や蜻蛉を捕まえるように慎重にハシバミ色へ手を伸ばした。そして掌が端整な顔を打つ。後ろでリボン結びになっているタートルネックの上から嵌められた首輪を掴んだ。鎖を短く持つ。乾いた血と瘡蓋で荒れた唇が自嘲的な笑みを作る。ミカモトは反対からもう一度その肌理 細かな頬を張った。催淫剤で紅潮していたのが嘘のように今は青褪めているほど白い顔色をして、それでもミカモトの手によって薄紅に染められていく。
「こんな地上の苦獄みたいな場所で股を開くために臭い飯を食っていていい人間じゃない」
ミカモトはまだ眠るレグナに気を取られた。カキザキというらしい青年は暴れ、形勢逆転を許してしまう。男はミカモトの首を掴み馬乗りになった。ミモリの好みよりもいくらか丸みのある目が翳り鼻先に迫った。
「おれに協力しろ。でなきゃここで殺す」
「よせ」
レグナの声がした。ミカモトを押さえ込む青年の腕を掴んでいる。
「彼女に言っても仕方ない。ヲミ…教えてくれ。ラグナは…誰に殺された?」
カキザキというらしい青年を押し除け、レグナはミカモトを起き上がらせた。彼女はレグナの目を凝然と見つめるだけで何も答えられなかった。
「騙して悪かった。オレは、ラグナが死んだことも、アンタが最期まで面倒看ていてくれたことも、本当は知ってた」
ミカモトは目を見開き、反対にレグナは目を伏せ、瞳を泳がせた。
「教えてほしい。ラグナは誰に殺された?」
様々なことが彼女の頭の中に浮かんだ。様々といっても深く考える気性でもなかった。ただあまりにも単純で記号的な連想ゲームが繰り広げられる。
「ミカモトがころしたの。ラグナのこと」
彼女はレグナの目を見られなかった。
「嘘だろ…?」
カキザキとかいう青年は2人をつまらなげに見遣るだけだった。
「嘘だよな…?オレはアンタといて…アンタが…」
ミカモトは強く首を振り淡い期待を打ち砕いた。レグナは顔を引き攣らせる。
「何を見てきたかは知らないが、飼主の命 に絶対的な下僕がいるとお前も知っていたはずだろう」
カキザキとかいう青年は口を挟んだ。彼はニットワンピースにも慣れたようだった。ベッドの上にどかりと座っている。沈黙が流れた。もうそれは居心地のいい静けさではなかった。
「ヲミ…」
ミカモトは暫く自分の裸足をあてもなく見つめていたが、思い立ったようにレグナの枷を外しはじめた。擦り傷だらけの皮膚が露わになる。彼は自由を得たというのに動きもしなかった。
「もうこないで。つぎみたら、ころす」
「オレを逃したら、アンタはどうなる…?」
彼女は答えず、貴賓室を出ていってしまった。
◇
ミカモトは黴臭く湿った座敷牢の壁際で膝を抱えていた。ドモンはおそらく初めて座敷牢の並ぶ地下に足を運んだ。格子の前に立っても彼女は反応すら示さず、普段から感情を持たない眼差しは格子の隅にある盛ソルトを所在なく凝らしていた。
「一度ならず二度も父上を裏切るとはな」
ドモンは嘲笑するがやはりミカモトは普段と変わらずぼんやりしていた。他者に対する情はなく、ミモリが最優先のこの女をドモンは忌み嫌っていた。まるで父ミモリに対する恋着を試し、思慕の念を競っているような。それでいて父の気に入りの性奴隷を拐(かどわ)かし、ついに命を狙う悪徒まで逃がした。信用を勝ち得ていながらどこまでも愛しい父を惑わし、誑 かし、弄 ぶこの女がドモンは憎くて憎くて仕方がなかった。今ならば大義名分が立つ。銃を抜いた。座敷牢での人死はなくはなかった。水墨ペインティングのような土壁に弾痕がつこうとも誰も気にしない。
「命乞いしろ。そうすれば俺が貴様を雇ってやる」
しかしミカモトはただ銃口を窺うように見遣っただけで動じる気配もまったくなかった。
「あのひとラグナじゃなかった」
銃からも興味をなくし彼女は藺草 マットの目に爪を立て、筋に沿って滑らせていた。
「貴様はあれを本当にあの床夫の亡霊だと思っていたのか」
俯いたままミカモトは首を振る。
「あれがどこの誰であろうと、父上があれを飼いたいというのなら貴様のすべきことはあれの拘束だったはずだ。父上を裏切ったあの亡霊には苦界こそ相応しい…が、生かしておいても仕方がない。次見つけたら必ず殺せ。ただし原型は留めておけ。人形にして父上へ謹呈する」
ミカモトは首肯も拒否もしなかった。
「貴様を殺して、俺が仕留めに行ってもいい」
ドモンは銃を下ろした。たったひとつこの女にも功績があった。ミモリを自ら怒り狂わせ、息子を除けば武力や忠誠心に於いて最も信頼のおける者を座敷牢送りにさせたことだった。彼は支配人のいる部屋に向かった。二軍の護衛では何人束になろうと風の前の塵に等しく、ドモンの侵入を許した。美男子と淫戯に耽ける父は自分で下したことも忘れ地下牢にいる護衛を呼んだ。それから事情を思い出したらしく、しまったという顔をした。
「父上…やっとこの日が来ました」
手を焼く邪魔者はもういない。焦らすように一歩一歩躙り寄る。ミモリは交合相手から下半身を抜いた。慌てて近くのテーブルから銃を取ると息子に向けた。トリガーガードと引金の狭間に入る太い指は窮屈そうだった。ドモンは微笑を浮かべ、躊躇う素振りもなく距離を縮める。
「貴様!御神本がいないことをいいことに、ワシを殺す気だな?そうはいかんぞ!」
ミモリはベッドにいる奴隷の粗末な衣を掴んで引き寄せると盾にした。仄かな嫉妬がドモンの中に湧き起こった。二軍の護衛から奪い取った安物くさい拳銃でまだ若い眉間を撃ち抜く。ミモリは風穴の空いた人形を投げ捨てた。
「き、貴様ぁ!」
「無駄な抵抗はおやめください、父上」
「何が、何が!何が望みだ!遺産か?え?この酒池肉林か?ええ?それとも権利書か?」
ドモンは首を捻った。そして穏やかに笑う。
「そんなものは俺にとって塵芥 同然です。父上…貴方は俺が望めば命以外、すべてをくださいますか?」
「と、とと、当然じゃ!命以外はすべてくれてやるぞぃ!」
銃口は激しく震える。笑いが止まらなかった。
「父上、私は初めて貴方が生肉人形相手に腰を振る姿を見た時から今まで、叶わない劣情に身を焦がしていたんです」
精度の低そうな拳銃は父の飾物と見紛う華美な銃を狙った。
「さぁ、銃を下ろしてください。撃ち落とすこともできますが、父上の指を壊してしまいます。私の射撃のテクニックは貴方もよくご存知でしょう?」
ミモリは後退り、そしてベッドに尻餅をついた。その拍子に銃が下ろされた。ドモンも銃を下ろし、さらに距離を詰める。
「く、来るな!寄るな!寄るでない!寄るでないわ!」
「父上。私を恐れないでください。私は御神本よりも個人的に、深く深く貴方を愛しています」
目の前に立つと父は子猫の如く震え、その円らな目を覗き込むと股間を濡らしシーツの色を変えはじめた。父の体内を通った水分の匂いがドモンの美しく通った鼻梁を掠めた。彼はわずかに甘みの薫る小水混じりの空気を、鼻を鳴らして嗅いだ。それは他者にとっては汚水だったがこの息子にとって媚薬以外の何物でもなかった。
「怖がらないでください、父上。さぁ、シャワーを浴びましょう。それともこのまま俺のものになりますか?」
ライスケーキかと思うほど柔らかな頬に手を添える。
「よ、よせ!気持ちの悪い!ワシゃ貴様の父親なんじゃぞ!」
「ええ、父上…そのとおりです。貴方は俺の父上 です」
義父は凍えたように震え、なかなか日に当たることのない白い肌も蒼くなっていた。ドモンは無防備な義父の汚れた場所を上等な手巾で拭った。
「触るな!おい!貴様!こんなことをしてただで済むと思うとるのか!バカもん!」
でっぷりとした腹をドモンはいやらしい手付きで揉んだ。何の邪魔もない。誰も助けにはこない。白桃のような柔肌が節くれ立った長い指の間で膨らんだ。その弾力だけで悦びが駆け抜けていく。
「父上…お慕いしています。ずっとこうしたかった。このライチのような白さと桃のような丸い腹にずっと触れてみたかった…」
骨張った手は女にするようにだらしなく垂れた豊満な胸ごと円を描いて揉みしだく。
「ええいっ!よさぬか!よさぬか!よさんか!触るでないっ!今なら許す!今ならすべてを許す!今やめればすべてのことを許すぞぃ!」
「許していただかなくて結構。もうやめることなどできません。快楽に溺れさせて差し上げます、父上…」
力尽くで反発の少ないぶよぶよとした脂体を転がした。
「ひぃいっ!」
淫らな妄想でしかなかった巨桃にやっとのこと手が届いた。張りのない尻たぶを遠慮の欠片もなく割り開く。
「貴様、何をする気だ!ワシゃ、床夫ではなっ…!」
前戯の必要もなく猛々しいまでに育った雄棒が父の太々しい尻の間へ挟まれていく。先端に触れた窄まりは蠢いている。ドモンはまた穏やかな微笑をこぼす。
「待て、待て、謝るぞぃ!謝る!謝る!」
「父上が謝る必要なんて何もありません。ただ父上は、このいやらしい身体を俺に与えてさえくだされば」
抉るように腰を進めれば剛直は括約筋を突破する。
「あぎぃっ!」
「父上…まるで父上の犯していた初物の床夫みたいな声を出すんですね」
暫くは動かず慣らすつもりでいたが、見た目から想像もつかない内部のきつさにドモンは抽送せずにいられなかった。潰れた蛙のような濁った声は途中から変わっていく。
「あひっ!あひぃっ!んぉおッ!」
胸を揉みながらドモンは腰を打ち付ける。尻や腿の贅肉がぶるん、ぶるん、と波紋を作った。肉と脂がぶつかり曇った音がする。
「あひっ!抜け!抜けぇっ!ワシゃ男じゃぞ!何をしてる……んほぉっ!」
ドモンは長年想いを寄せた相手との淫行に激しく奮い昂り、肉壺を強く貫いた。バネのような箇所を何度も突くと愛しの男親は反射によって逞しい腕の中で跳ね回る。
「父上はいつでも人形の穴にこうしては、膣のようだと言っていましたね。まさに父上のここも膣のように俺を締め付けて誘惑してきていますよ。父上も、女のようにここに俺の子種を受けてください」
「ぉおっ!おほぉっやめろ!中に、出すな!中に、っ!」
切望した媚肉と嬌声にドモンは艶めいた吐息を漏らした。射精欲をもう我慢できず、深く結合する。よく肥えた身体に指が食い込み逃さなかった。精が父の中に迸る。
「父上…っ」
「ぉひぃっっ!尻穴が!尻穴がァっ!イぐっ」
奥深くまで脈打つ屹立を捻じ込むと情人はオーガズムに達し、下半身はシーツを蹴った。愛する人を絶頂させた満足感にドモンは呑まれ、暫く肌を合わせていた。狭い内部に子種を注ぎきるだけでなく、湿肉に擦り込む。
「あひッ、あぁ…」
「腸内射精で共にオーガズムを迎えるのは淫乱の名器だそうですね、父上。それを聞くたびに恋い焦がれていたか、貴方には伝わらないんでしょうね」
しかしこれからは想い煩い、恋い苦しみ、焼け焦げるほどの妬みを抱いた分だけ父を抱ける。ドモンは名残惜しく思いながら淫父を拘束した。
「ああ……尻穴がぁ…っ!」
ドモンは微笑んだ。すると色気が醸し出される。彼は後ろから胸を揉み、陥没した肉粒を刺激する。
「俺の苗床になってください、父上」
邪魔な陰茎女を封じただけでここまで上手く事が運ぶとは思わなかった。余裕と愉悦によって再び淫靡な炎が灯される。
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