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征服欲 ②
思いっきり噛みおったわ。
血の匂いが鼻の奥に突き抜けていき、煌生の感情が更に高ぶった。目の前の男を征服したい。そんな欲が生まれる。忘れていた、この感情。
煌生は和馬が抵抗する暇も与えず、和馬の腕を掴むと、そのままキッチンのフローリングへと押し倒した。逃げられないように上に乗って、和馬を見下ろして問いかける。
「お前は……どうやったん?」
「…………」
「お前は平気やったん? 俺がおらんようなって」
「……平気やったわ」
「……そうか」
「…………」
「なら、俺に情はないやんな? おってもおらんでも一緒なんやろ? ほんなら、お前も『奉仕係』としてここにきたわけや」
和馬がじっと煌生を睨み付けていた。ここに来てからずっとこの顔やな、と心の中で思う。
「なら……ちゃんと、最後の仕事してってくれや」
「…………」
沈黙が続いた。相変わらず和馬は煌生から目を逸らすことなく、睨み続けていた。煌生もひるまず見つめ返す。長い沈黙の後、ゆっくりと和馬が口を開いた。
「俺を……抱くんか?」
「…………」
「他のヘルパーたちと同じように。犯すんか」
「…………」
和馬の声は、微かに震えていた。それが、怒りからなのか、恐怖心からなのか、それとも悲しみからくるものなのか、煌生には分からなかった。だが、そんな瞳で見られたら。
萎えるわぁ。
和馬を押さえつけていた腕の力を緩めた。
和馬がゆっくりと煌生から離れた。立ち上がって、床に落ちていた鞄を拾い上げると、キッチンを出ていった。
去り際にポツリと呟いて。
「また……来るわ」
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