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とある勉強会の話 2

 大勢の前で龍樹に激しく抱かれた後、葉月は宿泊施設の自室でぐったりと横になっていた。  身体中に龍樹の感触が残っていて、特に龍樹を受け入れた場所はまだ生々しく痺れるような強い違和感を覚えていた。  羞恥以上に強烈な快感と喜びの記憶があって、葉月は底なし沼に足を取られたような気分だった。龍樹が抱いてくれる限り、自分からこの立場を捨てることはできないと思ったし、仮に龍樹に誰か他に愛する人ができても、離れられる自信はなかった。 「葉月、平気か?」  ノックの音と同時に声がして、葉月は見るまでもなくそれが龍樹であることがわかった。布団の上で起き上がろうとすると、部屋に入ってきた龍樹に制止される。 「ちゃんと休んどけよ。さっきつらくしちゃっただろ」 「いや……そこまでじゃ……」 「腹減ったろうから、食えそうなもの持ってきたけど……今食うか?」 「あ、えと、さっきポカリ飲んだから……あとで……。ありがと……」  龍樹は微笑んで、軽食の袋を布団のそばに置いた。そして手を伸ばして葉月の頬に触れてくる。 「……葉月、すっごい可愛かった。俺がイッてって言ったらちゃんとイッてくれて、すごい嬉しかった」  穏やかな声でそんなことを言われて、葉月はどんな顔をすればいいかわからなくなる。目を泳がせると、龍樹はくすくすと笑った。 「こういうのは二人きりのときのが照れるよな、お前」 「……わかっててなんで言うの……」  意地が悪い、と思っても、とても本気で怒れなかった。何もかも惚れた弱みだ。 「だって、ちゃんとコミュニケーションとって仲良くなりたいし。葉月の恋人らしくなりたいから」  龍樹はそう言ったが、彼はずっと理想的な恋人の立ち位置にいてくれていると思った。問題なのは自分の方だ。 「……龍樹はいつも百点でしょ……」  呟くと、龍樹のはっきりとした目が葉月を真っ直ぐに見て、葉月は目を逸らしたくてたまらなくなる。その目に見つめられると、どうしていいかわからなくなった。 「……葉月は俺のことめっちゃ甘やかすなぁ」  その言葉をそっくり返してやりたかったが、言える気がしなかった。龍樹の大きな手が、葉月の頭を優しく撫でてくる。身長はさほど変わらないのに、龍樹の手は大きくてきれいで、それでいて男らしくてうらやましかった。 「葉月、キスしていい?」  訊かれて、葉月は戸惑った。 「……そんなの、わざわざ訊かなくてもいいよ……」 「でも今は仕事じゃないし、葉月が嫌がることしたくないよ」  そう言われたら葉月は、喜んでしまう己の心を抑えるのが難しくて、逆に愛想のない声で、いいよ、と言うことしかできなかった。それでも龍樹は気にしたふうもなく、温かく微笑んで、葉月の上に身を屈めてきた。  龍樹のキスは予想外に深く長くて、そして熱っぽかった。唇を何度もついばむようにされた上に、葉月の舌を舐めて、吸ってくる。抱かれたばかりの身体は、簡単に火がついて、葉月は龍樹の服をつかんで喉の奥で鳴いた。  唇の離れるぎりぎりまで舌をなぶられて、葉月は荒い息をつきながら龍樹を見上げた。 「……勃っちゃったね、葉月」  布団の上からやんわりと下腹部を撫でられて、葉月は腕で顔を隠す。くすくすと笑う声が聞こえて、さすがに抗議の声を上げた。 「わ、笑いごとじゃないよぉ。龍樹のせいじゃん……!」 「ごめん、責任取るから」  そう言って腰を撫でられて、葉月は息を飲む。葉月はいつだって龍樹を拒めない。龍樹はそれを知っているはずなのに、何故こんなことをしてくるのかわからなかった。しかも本当の恋人のような優しさと甘さを見せてくるのだから、葉月は冷静ではいられない。 「口でしようか? それともお尻がいい?」  言いながら龍樹は掛け布団を剥いでくる。葉月は拒むことも、素直にねだることもできなかった。 「明日に響かなかったら、今日はもう好きにしていいって高津(たかつ)さん言ってたけど……本番はもうきつい?」  高津というのは二人のマネージャーだ。本番の二文字への動揺は、葉月の顔にはっきりと表れたようだった。 「……さっきつらくしちゃったから、葉月のこと優しく抱きたいんだけど……どう? 身体つらい?」  葉月は首を振った。龍樹に抱きたいと言われて、すでに心も身体も期待でいっぱいになっていた。

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