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とある勉強会の話 4
翌日は質疑応答から始まった。
いわく、互いの魅力は何か、であるとか、これまでの性体験だとか。
パートナーに望むことは何かと訊かれたときの龍樹の返答は、仕事だとわかっていても葉月の胸をくすぐるものがあった。
「葉月はまだまだ俺に遠慮があるので、もっと甘えてわがまま言ってほしいですね。今は素直に甘えてくれるのはセックスの最中ぐらいかな? 俺は葉月のことすごく可愛いなーって思ってるんで、もっと甘やかしたいです」
ね、と微笑まれてマイクを渡されて、葉月は熱くなった顔を隠したいと思いながら、それでもなるべくうつむかずに答えた。
「俺は……望むことも何も、彼はいっつも優しいし、先輩としても頼りになるから、その、俺に愛想を尽かさないでくれたらいいなってぐらいです……」
声が尻すぼみになってしまったと思いながらちらりと龍樹を見ると、龍樹は苦笑して、マイクを通さない声で、そんな心配しないでよ、と言った。
優しくされすぎているとしか思えなくて、葉月はどんな顔をしていいのかわからなくなる。彼の恋人役としてもっと堂々としていていいのだと頭ではわかっていたが、恋心が邪魔をして演技をする余裕がなかった。
出会ったときに逆らえないほど恋に落ちたと思っていたのに、龍樹の優しさに溺れて、恋心は深まるばかりだった。
休憩の後、セックスの準備をするように言われた。もう何度目かわからないぐらい行為を重ねたのに、この後龍樹に抱かれるのだと思うと期待で胸が焦げるような思いだった。
龍樹はいつも葉月相手にペニスを硬くしてくれて、それで貫いてたくさん動いて気持ちよくなってくれる。自分の快感そのものよりも、龍樹が自分でイッてくれることがいつも葉月をたまらない気持ちにさせたし、身体の内と外の両方で感じる龍樹の感触は、強い幸福感で葉月を支配した。
準備を済ませ、用意された浴衣に着替えて控え室に向かうと、龍樹と高津が待っていた。
「甘いセックスって、どれくらい甘くていいんです?」
龍樹が高津にそんなことを訊いて、葉月はもっと遅れて来ればよかったと思う。これから龍樹にどんなふうに抱かれるのかなど、知らない方が心臓の負担が少なかった。
「もう甘々で。ハネムーンぐらいの感じでいいよ」
高津は葉月の心情など知る由もなく答える。早くも葉月の心臓は音を立て始めていた。
「前戯たっぷりしていい?」
「もちろん、時間あるし」
葉月は何も言えなかった。ハネムーンのように甘く、たっぷりと前戯を施されると思うだけで、身体の芯が熱を持ってたまらなかった。
「時間だね。葉月、行ける?」
龍樹に訊かれて、葉月ははにかみながら頷いた。いつか仕事だと割り切って、あるいは慣れて龍樹に抱かれることができるようになるのだろうかと考えたが、それはとても想像のできないことだった。
会場は学生が合宿で使いそうな広い和室で、すでに二十数名の参加者が集まっていた。彼らと何の境も設けずに、壁際の空いた畳の上に布団が一組延べられていた。
複数の視線を感じながら葉月はその用意された床まで歩いて、布団の上で参加者に向かって、新婚初夜の挨拶のように三つ指をついて頭を下げる。ぱちぱちとまばらに拍手が起こると、後はもう龍樹に身を任せるばかりだった。
龍樹は優しい目で葉月を見ると、迷いもなく抱き寄せて口づけた。最初から熱く求められるようなキスに、葉月は龍樹の袖をつかんで懸命に応える。舌を誘い出されて吸われると、それだけで腰が痺れるようだった。
そしてその間にも、龍樹の手が浴衣の裾を割って、脚から腰まで撫で上げてくる。腰骨をなぞるように指を這わされて、口づけの合間に声が漏れた。
ようやく唇が解放された頃には、葉月の身体は持て余すほどの熱を帯びてしまっていた。ペニスは触れられてもいないのに勃起してしまっていたし、すでに準備を整えてきたアナルは切なさに震えていた。
「た、龍樹……」
たっぷりと前戯をすると言っていたのが気にかかって、葉月はすがる声で龍樹を呼ぶ。熱のこもった瞳で葉月を見つめていた龍樹は、低い声で言った。
「うんと可愛がってあげるから……たくさん鳴いてね、葉月」
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