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第3話 ③

「他国の目があるから、表立っては予算を組めない、間諜部隊の費用だったんだ。国王陛下も、ご存知の上での、公的な裏金だったんだ……」 「そ、そうだったんですか……」 「オルガ……処分を覚悟してくれ」 「え? 俺がですか?」  思わず俺は聞き返し、目を見開いた。すると上司が遠い目をした。 「裏金作りに慣れている――というより、私もな、自分の力量は分かっているし、宰相閣下もよくご存知なんだが、各地に問い合わせるような行動はしないんだ。初めは私が作ったとして通そうと思ったんだが……」  上司が唇を一度強く噛んでから、涙ぐんだ。 「国王陛下や王弟殿下ですら、『あの者にこの書類は作れない。正直に申せ』と口を揃えておっしゃられたそうだ。暗に仕事が出来無い事を、私は認められているんだ。だからこそ、疑いなく裏金書類を作る存在として、この王宮では周知されていたんだ」  俺は上司のうなだれた姿を見て、複雑な心境になった。確かに上司は、俺から見ても仕事が出来無い。ただ、時折わざと手を抜いているなぁと感じていたのは、正しかったように思う。それに俺を庇おうとしてくれたのも本当だろう。彼は人情に厚い。 「どのような処分が下るんですか? やっぱりクビでしょうか?」 「――以前に、公的な裏金を不正だとして暴こうとした文官は、死刑だった」 「っ、げほ、え!?」  思わず焦って声を上げた。ノックの音が響いたのは、その時の事だった。

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