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第6話 ③

「え? も、もしかしてそれって、牢屋の代わりに、表向きだけ後宮へ行くという事ですか? 軟禁というか……ある種の、終身刑ですか?」 「そうだ。ただ少し不備のある書類を、作成しただけのお前に、罪を与えるのは外聞が悪すぎるからな。謁見の間には、人目が多かった」 「つまり死刑にはならないという事ですよね!? やったー!」  俺は前向きに捉えた。すると俺以外の三人が、少し唖然とした様子で顔を見合わせた。人生、生きていれば、何とかなるだろう。俺は、両親が亡くなっているので、葬儀の時からこの考えを一番重要だと思いながら、生きてきたのだ。死刑が回避出来たのならば、まぁ、あとはどうにかなるだろう。  さて、この日の内に、俺は後宮へと連れて行かれた。帰宅する事は許されず、私物も何も持ち込めなかったが、表向きは『今代初の男のお妃候補』として迎えられたので、予算が降りたらしく、それで当面の服を用意してもらう事が出来た。  ――俺に与えられた部屋は、明らかに上質な牢屋だった。  窓があって、鉄格子がついている。かなり高い位置にあるため、手が届かない。その下に寝台がある。こちらは柔らかい。後宮の他の部屋から運ばれてきたのだろう。シーツは自分で変えるようにと、部屋に入った時に言われた。他には、床の上に一人がけ用の大きな椅子があり、その正面にはテーブルがある。テーブルの上には、『自殺する時は、これを使うようにね』と言って、俺をここに連れてきた監視官が置いていった短刀がのっている。俺は自殺予定はゼロだが、笑顔を返しておいた。  その監視官は、現在、扉の外に立っている。内鍵は存在しない。外から鍵をかけられた形だ。俺は今後、一生ここで過ごすらしい。扉の下の四角い穴から、日に一度だけ、固いパンと水を与えられるそうだった。 「うーん……」  とりあえず椅子に座り、俺は膝を組んだ。ある意味これは、働かなくて良くなったという状況なのだが……規則正しく働いてきた俺からすると、暇すぎる。

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