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第9話 ②

「あの、護衛さんは、お名前は?」 『ルカスと言う』 「ルカスさん……俺はそんなに酷い事をしたのでしょうか……?」  見えないのを良い事に、俺は声だけ悲しそうなものに変え、表情は笑いかけたまんまで、彼に聞いた。名前まで簡単に教えてくれた。良い人すぎるだろう。なんだか、申し訳なくなってきた。しかし、『会話に応じさせる』『名前を聞く』の次の段階のゲームとして俺は、『同情して日常的に会話をしてもらう』という展開に持っていきたいのだ。  ルカスさんが別の人と交代をしたら、その人物とも同様のやり取りを繰り返していけば、少なくとも暇は潰せるはずだ。しかしこの声の主は俺に、「自殺する時は、これを使うようにね」と言った人物とは、声が違う。 『……俺の名前は、ルカスだ』 「はぁ? 聞きましたけど。国王陛下と同じなんて、恐れ多いお名前ですね!」 『っ……そ、そうだな。さして珍しい名前では無いな』 「この国には、かなりの数のルカスさんがいますからね。ほら、国王陛下から取って名づけたとして、特に幼子に多いですね。俺の隣の家の男の子も、同じ名前です。二歳です」  考えてみれば、もうあの子に会うことも無いのか。それは少し寂しいが、雑談が弾んでいるか良いとしよう。しかし、俺の質問に、ルカスさんは答えてくれない。俺、やっぱり、酷い事をしちゃったのかなぁ? 『お前は……オルガという名だったな』 「はい」 『オルガ――悪い事をしたか否かでいうのならば、お前は正しく仕事をしたと思うぞ。それも丁寧に、問い合わせまでして。文官としては適切な姿勢であるし、こういう事態にならなければ、宰相府が引き抜いていただろうな』  宰相府は、文官府の上位の存在だ。さすがにそれは、無いだろう。これはお世辞だな。なにせ、宰相府には、身分なども確かでなければ、入る事が出来無い。俺は由緒正しき平民だ。いいや、違うか。普通、後宮にも平民は立ち入りが許されないから、ルカスは俺が罪人だと知ってはいても、貴族だと誤解しているのかもしれない。

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