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第15話 ④
「馬鹿で悪かったな!」
『そこまで直接的に言ったつもりは無い。ただ、ああ。そうだな。お世辞にも、頭はよくないようだな。それは分かっていた』
「……」
『馬鹿が悪いわけではない』
「俺、そんなに馬鹿?」
『……ああ。お前は、まだ、俺が誰なのか気が付いていないのだろう?』
「へ?」
『……これを馬鹿と言わずして、他にどう表現して良いものやら』
「も、もしかして……」
そこでようやく悟って、俺は目を見開いた。
『気づいたか』
「俺の知り合い!? もしかして、特別な面会!? 偽名を名乗ってからかってた!?」
我ながら鋭すぎる洞察結果を述べた時、扉をルカスがガンと叩いた音がした。
『どうしてそうなった!』
「え? 違うのか? うーん」
扉の前で腕を組んだ俺は、その後も暫く考えてみたのだが、ルカスの声にはやはり聞き覚えがないし、そもそも後宮には平民はおろか部外者はやはり入れないだろうし、王宮内の同僚などの中で、ルカスと一致する生い立ちの知り合いはゼロであるし、皆目検討もっつかなかった。
「ルカスは、それで、ええと――誰なんだ?」
分からない事は聞くに限る。俺は質問した。推測ゲームは諦めた。ギャンブルは見極めが大切なのである。
『俺は国王だ』
「その嘘は恐れ多すぎるだろ。やめろ」
『嘘ではない』
「はいはい。じゃあ、どうせ誰もいないし、信じてやっても良いけどさ――さっき外に人がいっぱいいる気配がしたぞ? 大丈夫なのか? 嘘、言ってて」
『だから、本当だと言っているだろうが!』
その時、鍵の音がした。そして、扉が開いた。
唖然として、俺は目を見開く。
「……ルカス陛下……!?」
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