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第19話 ②

「そうなんです、宰相閣下! もっと言ってやって下さい! 俺には無理です!」 「ああ! まずは、妃候補とし、妃教育予算という形で、今朝泡沫に消えた間諜部隊の費用を捻出するべきだ!」 「――え?」 「そうと決まれば、早急に予算を組み直さなければならない。陛下、改めていうが、よくやりました!」  宰相閣下はそう言うと、一度だけ満面の笑みを浮かべてから、部屋を出ていった。唖然としたまま、俺は遠い目をするしかない。口元が引きつったまま、俺は呆然と立っていた。 「座って良いぞ、妃になったのだから」 「……」 「ああ、候補という形から始めるのだったな。しかし、やる事は同じだ」  手で座るようにと促されたので、俺はテーブルを挟んで正面の席に腰を下ろした。それから小さく首を捻りながら、おずおずと尋ねた。 「あ、あの? 妃ですよ? お妃様ですよ? もっと素性の調査とか、色々、そ、その……した方が……」 「この王宮に勤めている人間で、諜報部の騎士が一度も調査をした事がない者は、一人もいない。不審な点があった時点で、理由をつけて排除している」 「えっ」 「よって、非常に有能なお前の休暇中の言動も全て把握しており、記録もある」  それを聞いて俺は、目を見開いた。 「じゃ、あ……俺の趣味、知っていて……?」 「ああ。先程会いにいく前に全てのプロフィールを閲覧してから向かった」  何という事だ。俺が、打つ・飲む・買うが好きだとバレていたらしい。しかし、調査されたことがあるなんて、全く知らなかった。

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